ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は,ゲーム開発用ツールの展示会「GTMF 2011」の併設セミナーで,同社の開発成果について講演した。この中では,画像を高速に拡大・縮小できる画像処理技術「PlayView(プレイビュー)」,画像認識技術,そしてPSP対応ゲーム・ソフトをPS3上で動作させるソフトウエアの三つについて,その最新の研究成果を披露した。

 PlayViewは,10億画素を超える「超高画素」の画像を高速に拡大・縮小できる画像処理技術である(Tech-On!関連記事1同2日経エレクトロニクス関連記事)。静止画だけでなく,動画や音楽,Webへのリンクにも対応しており,攻略本コンテンツに動画を埋め込めば,この動画を使って攻略法を説明できる。カプコンのゲーム攻略本「モンスターハンターポータブル2nd G モンスターデータ知識書」などで採用済みだ。今回はこのPlayViewの機能拡張について発表した。

 まず,3D立体画像にも対応できるようになった。画像の拡大・縮小に応じて,リアルタイムで左目用画像と右目用画像の視差を制御するなどし,実現したという。これにより,3D立体写真集などを作成できる。実際,ルーセント・ピクチャーズエンタテインメントが2011年夏に発行する雑誌「IQUEEN(アイクイーン)」の電子版で,PlayViewによる3D立体視に対応している(同社の発表資料)。

 次に,ゲーム内に組み込めるようにした。例えば,ゲーム中にPlayViewを使って攻略本を閲覧できる。また,ゲーム進行に応じて,その攻略本のページを“ロック”できる。例えば,この機能はまだ進んでいない,先の場面のゲーム内容をユーザーに閲覧させないために利用できる。このゲームへの組み込み機能はPS3用のライブラリとして提供する予定である。

 続いて,書籍のようなページの概念を導入した。これにより,PlayViewコンテンツを章立てにできるという。

リアルタイムの顔認識が可能


 画像認識技術に関しては,顔認識とAR技術について講演した。SCEによれば,技術は成熟してきており,年齢を「20代」「30代」と10年刻みで判定できるようになったという。また,喜怒哀楽の感情も把握可能とする。

 フェイス・トラッキングについても言及した。フェイス・トラッキング技術は既に一部のゲームで採用済みだ。例えばPS3向けレーシング・ゲーム「グランツーリスモ 5」では,ユーザーの顔の向きに応じて,ゲーム画面内の視点が変わり,ゲーム内の映像が変化する。3Dメガネをかけた状態でも,ユーザーの顔の方向を認識できる。2011年末に発売予定の次世代携帯型ゲーム機「PlayStation Vita」でも,搭載したフロント・カメラやリア・カメラで顔認識が可能だ。人間一人の顔認識をリアルタイムで実行できるという。加えて,顔の向きや位置を検知できる。目や鼻,口といった各部位も検出できるという。こうした顔認識技術を利用することで,顔の表情を変えるだけで,操作できるようになる。例えば,画面内の物体を動かしたり,視点を変更したりできるという。

 講演では,PS Vitaを使った,アバターによるビデオ・チャットの様子を映像で見せた。アバターの顔の表情や頭の位置は,実際のユーザーの動きとリンクして同じように変化する。難しいのは口の動き。このため,現状ではユーザーが声を発しているときに検知した音を活用しているという。なお,この機能はあくまでデモ用で,PS Vitaなどに搭載される予定は現時点ではないとのことだ。

 AR技術に関しては,SCEは従来の専用の特殊なマーカーを使わずに実現できる技術を紹介した。例えば,恐竜のポスターをPS Vitaのカメラで捉えると,画面内には,そのポスターから恐竜が飛び出て見える。こうしたいわゆる“マーカーレス”のAR技術では,いかに高速に画像認識するか,現実世界とうまく融合して表現させるのか,などがポイントになるという。

 講演で最後に紹介されたのが,PSP対応ゲーム・ソフトをPS3上で動作させるソフトウエア「PSP Engine」である。同ソフトウエアはユーザー向けではなく,ゲーム開発者側に提供されるものだ。PSP Engineでは,PSP向けゲームの480×272画素の映像を,PS3向けの1920×1080画素でレンダリングする。

 3D立体視にも対応。右目用映像と左目用映像に2回レンダリングする。立体視の飛び出し具合も調整できるという。