4.利用シーンはどうなるのか


 Light Peakをベースにした光インタフェースを採用したことで,どういった利用シーンが生まれるのかについても気になっている。ソニーは,光インタフェースを採用したノート・パソコンと共に,その光インタフェースで接続する外付け機器「Power Media Dock」も発売する。Power Media Dockは、光ディスク装置や処理能力の高いGPUなどを搭載する。この二つの機器から,光インタフェースを使った利用シーンは以下のように推定できる。

 外出時は,薄くて比較的軽い(約1.2kg)ノート・パソコンを持ち運び,外で仕事や資料作りなどを行う。そして帰宅し,動画編集や3Dグラフィックス・ゲームなど,処理負荷が大きい作業をする場合は,Power Media Dockとノート・パソコンをLight Peakでつなぐ。そしてPower Media Dockが内蔵する米Advanced Micro Devices(AMD)社のGPU「Radeon HD 6650M」と1Gバイトのビデオ用メモリ(VRAM)を利用して,処理負荷が大きい作業を行う。ノート・パソコンのGPUよりも処理性能が高いため,動画編集や動画編集や3Dグラフィックス・ゲームなどをさくさく楽しめる。

 現在では,こうした外部の高速GPUとつなぐ用途ぐらいしか,“Light Peakならでは”という利用シーンが思い浮かばない。実際の対応機を手に取ることで,もっと素晴らしい用途が分かるのだろうか。

5.インタフェース業界のエコシステムはどう変わるのか


 さまざまなインタフェースを集約化するLight Peak。ThunderboltとしてApple社のパソコンに採用され,ソニーのパソコンにも採用されるようになれば,他社のパソコンや周辺機器へもLight Peakベースのインタフェースが広がるようになるだろう。将来的にはパソコン以外,例えばタブレット端末やスマートフォン,テレビなどにも広がる可能性がある。これはインタフェース業界のエコシステムをどう変えるのか。
 
 少なくとも二つの変化が起きそうだ。一つは,パソコンに搭載されるコネクタ数が減少の方向に向かう。そうなると,大量に安価にコネクタを製造できるメーカーや,コネクタに関して飛び抜けて高い技術力を持つメーカー以外は,生き残ることが難しくなりそうだ。

 もう一つの変化は,特定のインタフェース規格に準拠した送受信LSIの数が減少することだ。Light Peakをベースにしたインタフェース技術を使えば,DisplayPortやPCI Expressだけでなく,HDMIやSATAの信号も伝送できる。つまり,それぞれの規格ごとに,送受信LSIを用意する必要がなくなるのだ。加えて,Light Peak用ブリッジLSIやコントローラLSIなどがIntel社のチップセットに搭載されたり,CPUに集積化されたりする可能性がある。このため,送受信LSIメーカーは今後,自らの製品に付加価値を付けることにさらに苦労することになるのではないだろうか。

 そしてLight Peakベースのインタフェースが普及し,かつほぼすべてのインタフェース規格のデータをやりとりできるようになれば,新しいインタフェース規格が次々と登場する,というケースが今後,減るかもしれない。かつて,新しいインタフェース規格が登場するたびに,その伝送技術に対応した送受信LSIを作る新興企業が登場し,新しいインタフェースの拡大と共に成長を遂げてきた。ところがLight Peakの普及で,こうしたビジネス・モデルが今後,立ち行かなくなる可能性がある。

 以上,筆者の気になることをつらつらと書きましたが,もし読者の方でLight Peakに関してご意見・ご要望があれば,こちらまでぜひ,ご連絡下さい。