図1 Light PeakとSFP+の光送受信モジュールの比較(Ensphere Solutions社の資料を基に本誌が作成)
図1 Light PeakとSFP+の光送受信モジュールの比較(Ensphere Solutions社の資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]
図2  上がLight Peak向け光送受信モジュール。Ensphere Solutions社のレーザ・ドライバICやアンプ素子が搭載されている。モジュールを制作したのは,「香港SAE Magnetics社」(Ensphere Solutions社)である。下は,光送受信モジュールを基板上に配置するために,モジュールを収納する金属ケース。「Foxconn」のロゴが見える。
図2  上がLight Peak向け光送受信モジュール。Ensphere Solutions社のレーザ・ドライバICやアンプ素子が搭載されている。モジュールを制作したのは,「香港SAE Magnetics社」(Ensphere Solutions社)である。下は,光送受信モジュールを基板上に配置するために,モジュールを収納する金属ケース。「Foxconn」のロゴが見える。
[画像のクリックで拡大表示]

 前回は,コネクタやコンプライアンス試験がインタフェースを集約化する上で重要になると書いた。今回はLight Peakのような光伝送技術を民生機器に搭載する上で課題となる,コストと消費電力,そしてモジュールの大きさなどについて取り上げたい。

 Light Peakでは,こうした三つの課題の解決を図っている。光通信やLight Peakに向けて,発光素子のドライバICや受光素子の後段に利用するアンプなどを開発する米Ensphere Solutions社によれば,Light Peak用光送受信モジュールは,光通信で利用される送受信モジュールよりも安価で小さく,消費電力も少なくできるという(Tech-On!関連記事1)。

 具体的には以下の通り。光通信で利用される「SFP+」仕様の送受信モジュールの場合,製造コストはデータ伝送速度10Gビット/秒当たり約14米ドルで,大きさは56.5mm×13.4mmで高さは8.5mm。消費電力は,10Gビット/秒当たり1Wである(図1)。

 一方,Light Peakの光送受信モジュールの価格は,データ伝送速度10Gビット/秒当たりで,製造コストを2米ドル以下にすることを目標としており,量産すれば実現可能な値だという。モジュールの大きさは12mm×10mmで,高さは2mmと小さくて薄い(図2)。消費電力は10Gビット/秒当たり130mWと,SFP+の約1/8である。

 Light Peak用光送受信モジュールが安価なのは,構成部材が安価で,かつ部材数が少ないからだ。光源には,レーザ素子として安価な発振波長850nmの面発光レーザ(VCSEL)を利用。伝送路には多モード(マルチ・モード)の光ファイバを利用している。一般にマルチ・モードの光ファイバは,光通信で利用される単一モード(シングル・モード)品よりも安い。一方,光通信ではレーザにシングル・モード発振が可能で,かつ波長安定性の高い高価な半導体レーザを利用する。光ファイバもシングル・モード品だ。

 構成部材も少ない。例えば,レーザの光出力を一定に保つ「APC(Automatic Power Control)」機能に向けた受光素子を搭載していないもようだ。光通信用の場合,安定的な通信を実現するために,レーザの光出力をなるべく一定に保つ。このとき,光出力の安定化のために,レーザからの光出力をほぼリアルタイムで検知する。この検知用に,データ通信とは別に受光素子を搭載する。Light Peakではこうした受光素子を搭載していないという。

 加えて,民生機器で利用するLight Peakは,インフラで利用する光通信ほどの信頼性や製品寿命が必要ないので,コスト削減が可能になる。

 光送受信モジュールの小型化が可能になるのは,構成部材が少なくなるためだ。また消費電力を削減できるのは,APC用の受光素子などを不要にしているためである。

 では,Light Peak用光送受信モジュールの部材を作っているのはどのような企業か。例えば米Oclaro社は,光源のVCSELを開発している。

 Ensphere Solutions社はレーザ・ドライバICやアンプ素子を開発中だ。また,電力管理ICやメモリなどの光信号の送受信に必要な半導体素子を1チップに集積化したものを開発済みである。

 光モジュールを開発しているのが,米Avago Technologies社やTDKの関連企業である香港SAE Magnetics社(Tech-On!関連記事2)。コネクタを開発中なのが,鴻海精密工業(台湾Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.,通称Foxconnあるいは富士康)などとみられる(同3)。

 ソニーもLight Peak向けの素子を開発しているもよう。それは,「受光素子」(Light Peakに詳しいある人物)だという。ソニーはレーザや受光素子など,光素子の技術を持っている。それだけに,受光素子だけでなく,VCSELも開発している可能性もありそうだ。