図1  Light Peakをベースにした光インタフェースを搭載したソニーのノート・パソコンと、そのインタフェースで接続して利用する外付け装置「Power Media Dock」である。
図1  Light Peakをベースにした光インタフェースを搭載したソニーのノート・パソコンと、そのインタフェースで接続して利用する外付け装置「Power Media Dock」である。
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一本化を図る三つの理由


 なぜ,こうしたインタフェースの「一本化」を図る動きが加速しているのか。理由は少なくとも三つある。第一に,コネクタ数を削減できる。現在ノート・パソコンやタブレット端末では,薄型化を求める声が大きい。そのためには,コネクタ数の削減が必要になる。また,デジタル・カメラや携帯電話機といった小さい携帯機器では,そもそもコネクタ数を増やすのは困難だ。

 第2に,低コスト化につながる。まずコネクタ数を減らせばその分,コネクタ部品や電磁雑音対策部品などのコストを削減できる。物理層を共通化できれば量産効果によって,物理層自体の製造コストの削減につながる

 第3に,高速なデータ通信を可能にする物理層の技術が進化しことが背景にある。いまやインタフェース規格として,5Gビット/秒以上に対応するものが増えている。送信側で施すエンファシス処理や,受信側で施すイコライザ処理の技術が進化しているからである。

コネクタやコンプライアンス試験が大事


 インタフェース規格の集約化を図るには,単に高速な伝送技術を用意するだけでは不十分だ。ここでカギを握るのが,コネクタとコンプライアンス試験である。

 コネクタが重要になるのは,集約化を図る高速なインタフェース向けに新しいコネクタを追加してしまっては,コネクタ削減の効果は薄くなるからだ。多くの場合,「レガシー規格」として,従来のインタフェースのコネクタを搭載する。それ故,さまざまな規格のインタフェース信号を伝送できる新しい規格が登場しても,単にその新しい規格のコネクタが追加されるだけ,というケースも多々ある。

 そこでLight Peakでは,コネクタをなるべく共通化するという考えを持っているようだ。実際,ThunderboltではDisplayPortのミニ・コネクタをそのまま流用している。そしてソニーが採用した光版Light Peakでは,USB 3.0と互換性のある新しいコネクタを採用したとみられる。Light Peakでは,コネクタの前方にUSB 2.0用端子,その奥にUSB 3.0用端子を設け,さらに奥に光信号を送受信する専用端子を備えた専用コネクタを開発中だった(Tech-On!関連記事12)。従来のUSBコネクタも挿抜可能で,かつ光信号も伝送できる。

 今回のソニーのパソコンに搭載されたコネクタは,このコネクタをベースにしているとみてほぼ間違いないだろう。ソニーがプレス・リリースで公開した写真を見ると,Light Peak用光送受信モジュールから出た光ファイバがUSBコネクタにつながっているからだ(前ページの図2)。USB 3.0のコネクタを挿入可能で,おそらく接続する先のインタフェースの種類によって,伝送する信号を変えるとみられる。

 コンプライアンス試験が重要になるのは,対応をうたったインタフェースと接続した際に,仮につながらない場合が出ると,ユーザーにとって使い勝手が悪くなるからだ。DVIがその例である。相互接続性を担保しにくく,同じDVI対応機器でもうまくつながらないといった「相性問題」を引き起こした。これが,DVIの普及を阻害した一因となった。その反省を生かしたのがHDMIだ。HDMIはDVIと同じ伝送技術TMDSを利用しながら,コンプライアンス試験の内容を厳格にし,相互接続性の確保を重要視した。

 今のところ,Thunderboltや光版Light Peakに関するコンプライアンス試験について,詳細は明らかになっていない。だが,DisplayPortやPCI Expressなど,複数のインタフェースに対応するならば,各インタフェースにおけるコンプライアンス試験に「何らかの形で対応するのが必要になるだろう」(DisplayPortに詳しいある業界関係者)。少なくとも2011年5月の段階では,「Thunderbolt側からコンプライアンス試験に関するアプローチはまだ来ていない」(同)ようだ。

 現在,Thunderboltで対応が明らかになっているのが,DisplayPortとPCI Express。ソニーが採用する光版Light Peakも同様だとみられる。Thunderboltと光版Light Peak,いずれも対応するインタフェース規格は今後さらに増えそうだ。例えばHDMIやSATAなどである。対応するインタフェース規格が増えるにつれ,コンプライアンス試験もより重要になっていきそうだ。