富士フイルムは、スマートフォンを利用して脳卒中の救急医療を支援する遠隔画像診断治療補助システム「i-Stroke(アイストローク)」を開発した。富士フイルムメディカルを通じ、2011年6月16日に発売を開始する。当初は、Apple社の「iPhone」のみに対応するが、同年秋をメドに、Android端末への対応も図る予定である。
今回のシステムは、東京慈恵会医科大学(脳神経外科学講座 教授の村山 雄一氏)との共同研究により、臨床的な知見を得た(以前のデジタルヘルスOnlineの関連記事)。村山氏は、同システムについて「脳卒中の発症後、いかに迅速かつ適切に処置できるかどうかで、患者の生死や予後が大きく左右される。そこに大きく貢献するシステムだ」と位置付ける。
実際、脳梗塞の治療は、発症から3時間以内に「t-PA(tissue-type plasminogen activator)」を投与したり、8時間以内に血栓除去デバイスによる血管内治療を実施したりすれば、後遺症を軽減できる可能性が高いとされる。しかし、専門医が緊急時対応のために病院に24時間常駐するのは現実的ではないため、緊急時にチーム医療を実現できる環境の構築が求められていたという。なお、t-PAは、急性脳梗塞に適用される脳血栓溶解療法の薬剤である。
i-Strokeは、脳卒中を発症した患者が搬送された病院から、院外にいる専門医が持つスマートフォンに患者の検査画像や診療情報を送信できるシステムである。これにより、専門医が院内にいなくても、専門医が実際の患者の画像などを見ながら治療に必要な処置のアドバイスをするなどの支援が可能になる。
今回のシステムが備える主な機能は以下の通りである。
・「ストロークコール機能」:脳卒中の患者が運び込まれた病院から、あらかじめ登録された専門医のスマートフォンに一斉連絡ができる
・「タイムライン表示」:すべての検査画像や専門医のコメントを時系列で見ることができる
・「治療補助機能」:t-PA投与量の算出や禁忌項目の評価の確認ができる
・「3D画像作成機能」:脳血管内画像を見やすく表示する(オプション)
・「ストリーミング機能」:手術画像の様子をリアルタイムで見ることができる(オプション)
今回のシステムは、富士フイルムの医用画像情報ネットワークシステム「SYNAPSE(シナプス)」を導入している病院であれば、同システムとダイレクトに連携できるほか、他社の医用画像情報ネットワークシステムであっても連携させることは可能だという。システムの導入コストは、状況に応じて1000万~5000万円とする。