米OnLive社は、同社のゲーム・サービスをタブレット端末やテレビ、Blu-ray Discプレーヤーでの利用を想定したデモを披露した。新興企業ながらE3会場内に構えるブースは大きく、かつプレス・ルーム内にもブースを設置するなど、かなり力を入れた展示をしていた(図1)。
OnLive社は、インターネット上のサーバーでゲームを実行し、その映像データだけを端末に送るという、いわゆるクラウド型のゲーム・サービスを提供している。現在はパソコンを中心にサービスを展開しているが、今後はタブレット機のほか、テレビやBlu-ray Discプレーヤーといった据置型のAV機器へもサービスを拡大する考えを持つ。実際HTC社のタブレット機「HTC Flyer」に、OnLiveのクライアント・ソフトウエアをプリインストールして提供する予定だ(図2)。
OnLiveが提供するゲーム・サービスの中で特徴的なのが、ユーザー間の交流を深める、いわゆるソーシャル性に重きを置いていることだ。代表例がゲーム・プレーの録画機能と、ほかのユーザーのゲーム・プレーの観戦機能である。
録画機能は、ユーザー自身がゲームをプレー中、操作が非常にうまくいったり、おもしろい場面に遭遇したりした場合、その場面ですぐさまボタンを押せば、「10秒程度映像を記録できる」(説明員)という。録画した動画をユーザー同士で視聴できる。
また観戦機能は、「Arena」と呼ぶ。Arenaのメニュー画面には小さなゲーム画面が複数表示される(図3)。この一つ一つの画面が、ほかの各ユーザーがプレーしているゲームの様子を表したものだ。この複数の画面から一つを選択すると、そのユーザーのゲーム・プレーを視聴できる。
E3の会場では、こうしたOnLiveのゲーム・サービスを、HTC FlyerやほかのAndroid搭載タブレット端末、iPadなどでもスムーズに楽しめることをアピールしていた(図4)。タブレット端末向けの専用アプリを提供予定である。ただし、タブレット端末へのサービス開始時期について明言は避けた。展示されていた実機はほぼ問題なく動作していたため、遅くとも2011年末にはサービスが開始すると推察できる。
一方、AV機器に関しては、OnLiveのクライアント・ソフトウエアなどをプリインストールした米VIZIO社のテレビとBlu-ray Discプレーヤーを出展した(図5)。いずれもEthernet端子を備えており、インターネットに接続可能。これにより、特別な外付け機器なしにOnLive社のゲーム・サービスを楽しめる。説明員によれば、展示していたVIZIO社のテレビとBlu-ray Discプレーヤーはいずれも2011年末に発売される見込みだという。
Intelとも協業
こうしたOnLiveのゲーム・サービスに対応したテレビやBlu-ray Discプレーヤーなどの機器は今後さらに増えそうだ。同社はテレビや光ディスク装置、セット・トップボックス向けにSoCを手掛ける企業との協業に乗り出しているからだ。現在数社のSoCメーカーと話を進めているという。そのうちの一社が米Intel社である。同社のSoC「CE4100」でOnLiveのゲーム・サービスに対応する。
ただし、テレビなどのAV機器に付属するリモコンではゲームの操作は難しい。OnLive社は現在、ゲーム用コントローラを開発中だ(図6)。AV機器とはBluetoothを介して通信する。2011年後半に製品化予定である。
このほかテレビに外付けすればOnLiveのゲームを楽しめるようになる小型装置も展示していた。HDMI端子とEthernet端子を備える。HDMIを介してテレビと接続し、Ethernetを通じてインターネットにアクセスする。つまり、インターネット接続機能を持たないテレビでもOnLiveのゲーム・サービスを楽しめるわけだ。
この小型装置は現在発売中で価格は100米ドルほど。「キャンペーンやクーポン券などを利用すれば、さらに安くなる」(説明員)という。
OnLiveのサービスは現在北米のみ。まもなく英国でのサービスを開始する予定。今後はさらにサービス提供地域を拡大する考えを持つ。アジア圏なども視野に入れているという。