インターネットとテレビの融合を巡る議論が米国で盛り上がりを見せている。議論の中心は「いかに収益を確保するか」だ。インターネットにつないだテレビでWebコンテンツを表示することから一歩進み、スマートフォンやタブレット端末などを組み合わせたシステムとして収益化を目指す知恵の絞り合いに移行しつつある。

 家庭のリビングにほぼ必ずある「家電の王様」テレビが生み出す巨大市場に大きな期待を寄せ、積極的に動いている企業はテレビ・メーカーだけではない。むしろ、存在感を増しているのは、テレビ向けのソフトウエア基盤「Google TV」などでテレビの世界に入り込もうとする米Google社のようなインターネット関連企業だ。米Netflix社のようにインターネットを使った低価格VOD(ビデオ・オン・デマンド)で、既存のCATV(ケーブル・テレビ)や衛星放送といった業界の脅威となる企業も出てきた(連載第1回の「動揺するハリウッド,台頭する低価格VOD」を参照。記事はこちら)。

 こうした中、韓国Samsung Electronics社が手掛けるテレビ向けのアプリケーション・ソフトウエア(アプリ)配信サービスが、静かながらも順調な出だしを見せている。同社が、テレビ向けに配信サービスを始めたのは2010年2月のこと。現在は、約550種類のアプリを110カ国以上で配信中だ。

アプリ配信が加速へ、500万ダウンロードを突破

500万ダウンロードの内容を説明したSamsung社の資料
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 アプリの数こそ少ないが、2011年5月にはアプリの累計ダウンロード数が500万本を超えた。同年1月に約1年を掛けて200万ダウンロードを達成した後、約3カ月で300万本を上乗せし、配信数が加速する気配を見せている。薄型テレビの出荷台数で世界シェア・トップのスケール・メリットを、新興国を含めた世界市場で発揮しつつある。

 Samsung社の米国法人でスマート・テレビ関連の事業開発に4年間携わってきたSenior ManagerのJason Han氏は、現状をこう分析する。

 「500万本は、現段階ではいい数字だが、収益化の側面から見ると、まだ初期のステージに過ぎない。ただ、ユーザーがテレビ向けのアプリに時間を使ってくれることが分かったのは大きい」

 Samsung社がテレビ向けアプリに懸ける意気込みは相当なものだ。2010年には、韓国や欧米でアプリ開発の賞金付きコンテストを実施した。ソフトウエア開発キット(SDK)を配布し、アプリ開発者の発掘と囲い込みに力を入れている。自社の技術基盤を啓蒙する活動で外部開発者のコミュニティを呼び込む、米国のIT関連企業が得意とする「この指、止まれ」型の開発戦略のノウハウを何とか手中にしたい考えだ(連載第2回の「進化するテレビ,草の根が開く新メディア」を参照。記事はこちら)。