左から、東京大学 先端科学技術研究センター 教授の児玉龍彦氏、富士通 特命顧問 小倉誠氏、富士通 バイオIT事業開発本部 IT創薬推進室 室長の松本俊二氏
左から、東京大学 先端科学技術研究センター 教授の児玉龍彦氏、富士通 特命顧問 小倉誠氏、富士通 バイオIT事業開発本部 IT創薬推進室 室長の松本俊二氏
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これからのIT創薬の説明資料
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IT創薬に関する説明資料
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 東京大学 先端科学技術研究センター(先端研)と富士通は、抗がん剤などの候補になる低分子化合物を効率良く創出するための共同研究に着手したと発表した。両者が取り組むのは、化合物構造をコンピュータ上で設計し、実験せずに候補を絞り込む「IT創薬技術」である。今後3年間で、がんや生活習慣病の治療薬となり得る低分子化合物、いわゆる「リード化合物」を見つけだすことを目指す。

 従来の創薬では、既存の化合物を改良しながらリード化合物を探す手法が採られていた。しかし、この手法ではヒット率が低かったり、大幅な改善が困難だったりする課題があったという。さらに、実際に化合物を合成してから評価するため、時間やコストが掛かるという問題もあった。

 それに対して今回は、コンピュータ上の計算により、既存物質にとらわれずに新規の化合物構造を絞り出し、合成や実験をせずに評価する。このため、短時間・低コストでの創薬が期待できるという。

 今回の共同研究では、まず、東京大学 先端科学技術研究センターが研究している「疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質の情報」を利用する。この情報を基に、富士通が開発した低分子設計ソフト「OPMF」と、高精度結合活性予測ソフト「MAPLE CAFEE」を活用して低分子化合物を設計する。その後、コンピュータ上で設計した化合物について、東京大学 先端科学技術研究センターで生物・化学実験を実施して評価する。

 東京大学 先端科学技術研究センターと富士通によるIT創薬技術を基盤として、今後、さまざまな製薬メーカーを組んで実際の創薬を進めていく考え。既に、国内の3社の製薬メーカーとそれぞれ話を進めているという。