インタラクティブIPレンダリングのデモの様子
インタラクティブIPレンダリングのデモの様子
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 NHK放送技術研究所は、開催中の「技研公開2011」で、本物に近い3次元のアニメーション映像を、利用者の操作に応じてリアルタイムに描画して表示する「インタラクティブIPレンダリング」技術を実演した。

 具体的には、IP(integral photography)方式に基づく3D映像が表示されたディスプレイを横に傾けると、ディスプレイの中にいるキャラクターが、傾きに応じて滑って落ちていく、というデモを実演した。3D映像であるため、あたかもディスプレイの箱の中に、生きたキャラクターが入っているかのように見えるのである。「当初は、ディスプレイを前に傾けると、キャラクターが画面から飛び出してくるようにするつもりだったが、やや見えにくかったので、今回のようにした」(説明員)。

 ここでいうIP方式は、NHK技研が開発を進める「インテグラル立体テレビ」の基礎になっている技術である。現在発売されている3Dテレビが左目用と右目用の映像2種類を表示するのに対して、IP方式の3D映像は、原理的にはすべての方向から見た映像を同時に表示する。

 単なる多視点の3D映像とも異なる。IP方式は、光線再現方式とも呼ばれ、実際の物体がそこにあるかのように光線の出し方を工夫する。このため、IP方式を理想的な形で実現できれば、「調節と輻輳の矛盾」が起こらないとされる。調節と輻輳の矛盾とは、両目はディスプレイから飛び出てくる映像、あるいは画面奥にある映像に合わせて、視線の角度を決めるのに対し、目の焦点はディスプレイの表面に合ってしまうこと。二つの奥行き感が一致しないことに脳が混乱して、「3D映像酔い」などと呼ぶ影響も起こり得る。理想的なIP方式の映像では、目の焦点もディスプレイ面ではなく、映像に合うため、この問題が起こらない。

 IP方式の映像データは、実写であれば実物の撮影対象をレンズ・アレイを装着したビデオカメラで撮影すれば作成できる。ところが、CGやアニメーション映像では、元々の「実物」がないため、こうした手法が使えない。

 CG/アニメーション映像のIP方式向け映像を作成するには、さまざまな角度から見える映像を、「光線空間」と呼ばれる6次元(一般には5~9次元)のデータ空間内に再構成する必要が出てくる。

 NHK技研は今回、アニメーション映像の光線空間を作成する技術を開発し、さらにその光線空間を利用者の操作に応じて、リアルタイムに作成する技術も開発した。それによって、今回の実演が可能になった。

動画 どーもくんとその仲間達が、傾きに合わせて右に滑ったり左に滑ったり…

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