デュアル・ストリームによる3D映像のデモ。3Dメガネは、市販されているアクティブ・シャッター方式の製品である。
デュアル・ストリームによる3D映像のデモ。3Dメガネは、市販されているアクティブ・シャッター方式の製品である。
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スキームの概要
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 NHK放送技術研究所は、開催中の技研公開2011(一般公開は2011年5月26日~29日)で、3次元(3D)映像データを放送と通信の両方で送信し、3D対応テレビに表示する実演を公開した。NTTとの共同開発による結果だという。

 この3D映像の伝送方式は、「デュアル・ストリーム」と呼ばれる技術の一つである。具体的には、左右の目に見せる映像のうち、一方を放送波で、もう一方を通信回線で家庭のテレビに送信し、左右共にフルHD相当の品質の映像をテレビに映し出す。

 現在、BSなどで実施されている3D放送は、サイド・バイ・サイド(side-by-side)という方式である。左右の映像をそれぞれ約1/2のデータ量に圧縮することでフルHDの映像1フレーム分に両方を収納し、テレビ側で各映像を復元して表示する。このため、3D映像を左目だけ、右目だけで見ると、フルHDの映像よりも解像度が低下してしまう。今回の方式は、この解像度低下がないことが最大のメリットとなる。

 ただし、デュアル・ストリームによる3D映像配信では、一般には通信回線で送る映像が放送波よりも遅れて伝わる。このため、「放送波に埋め込んで、映像の同期などに用いている『PTS』と呼ぶタイム・スタンプ信号を、通信回線で送る映像データにも埋め込み、テレビでPTSを基に左右の映像を同期させて表示する」(説明員)という。

 ちなみに、3D映像の表示に用いたテレビは、パナソニックの54型3D対応テレビ「TH-P54VT2」である。ただ、今回の実演のために仕様を変更したかどうかについては明らかにしていない。

 NHK技研は、今回の技術を、放送と通信の連携サービス「Hybridcast」の応用例の一つという位置付けで公開している。Hybridcastは、テレビ放送の放送内容に合わせて、iPadのようなタブレット端末など向けにもメタデータを送信し、表示コンテンツを切り替えていくサービスである。PTSを利用して異なる伝送路で伝わるデータを同期合成することが中核技術となっている。