図1 85型で7680×4320画素の液晶ディスプレイ
図1 85型で7680×4320画素の液晶ディスプレイ
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図2 画素数は現行テレビの16倍に(シャープのデータ)
図2 画素数は現行テレビの16倍に(シャープのデータ)
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図3 臨場感や没入感が得られる(シャープのデータ)
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図4 NHKのロードマップ(NHKのデータ)
図4 NHKのロードマップ(NHKのデータ)
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 NHKとシャープは2011年5月19日、7680×4320画素(約3300万画素)の「スーパーハイビジョン」に対応する85型の液晶ディスプレイを開発したと発表した(NHKの発表資料シャープの発表資料)。NHKはこれまで、プロジェクターを用いた投影型のSHV対応ディスプレイを開発してきたが(Tech-On!の関連記事1)、「直視型のディスプレイでは世界初」(NHK 専務理事 技師長の永井研二氏)とする。

 85型の開発品は、画素ピッチが0.245mm。輝度は300cd/m2、表示色数はRGB各10ビットの10億色である。7680×4320画素で60フレーム/秒のスーパーハイビジョン映像を、16本のHDMIケーブルを用いてディスプレイに表示している。

 シャープの大型テレビ向け液晶パネル製造ラインで試作された。「パネル設計は2年ほど前に取り掛かり、パネル自体は昨年の秋に完成した。その後は絵作りなどを進めてきた」(同社 常務執行役員 研究開発本部長 兼 知的財産権本部長の水嶋繁光氏)という。85型で7680×4320画素という「大画面・超高精細・高画質のディスプレイ性能を実現したことで、従来のテレビにはない臨場感や没入感が得られる」(同氏)とし、開発品の完成度に自信を見せた。

 7680×4320画素という現行テレビの16倍の画素数のディスプレイを開発するため、「これまで培ってきた技術を総動員したほか、足らない部分は新たな技術を導入した」(シャープの水嶋氏)とする。新たに導入した技術の一つが、「低負荷配線技術」と呼ぶ技術である。7680×4320画素の映像信号を遅延することなくパネルに伝送するため、「配線材料や配線構造を、現行のテレビ向けパネルから変更した」(同氏)とする。具体的な配線材料については明らかにしなかった。

 液晶ディスプレイとしての表示性能に関しても、「最高レベルの技術を導入した」(シャープの水嶋氏)とする。亀山第2工場や堺工場に導入済みの光配向技術「UV2A」や、RGB3色のLEDを光源に用いた直下型のLEDバックライトを採用する。色再現範囲やコントラスト比は「非公開だが現行のテレビ以上の性能を実現している」(シャープの説明員)とした。

 スーパーハイビジョンは、現行のデジタル放送を超える「超高精細映像システム」として、NHKが1995年より研究開発を進めているもの。2020年の試験放送開始を目指している。2030年ころには、「空間像再生型立体テレビ」とも呼ぶインテグラル・フォトグラフィ(IP)方式の3D映像の実用化していきたい考えとしている(Tech-On!の関連記事2)。

 なお、開発品は、2011年5月26~29日に開催されるNHK放送技術研究所一般公開(技研公開2011)で公開される。