授賞式後の記念撮影 Tech-On!が撮影。
授賞式後の記念撮影 Tech-On!が撮影。
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上杉氏のチームが創成した「アドへサミン」 京都大学らのデータ。
上杉氏のチームが創成した「アドへサミン」 京都大学らのデータ。
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 在日ドイツ商工会議所とドイツ企業12社は,2011年5月12日に都内で第3回ドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞2010」の授賞式を開催し,受賞者5名を発表した(ニュース・リリース:PDF)。同賞は日本の若手研究者の支援と日独産学連携の推進を目的として2008年に創設された(Tech-On!関連記事1同2)。

 同賞の応募資格は,日本の大学・研究機関に所属する45歳以下の若手研究者で,応募対象は環境・エネルギー,健康・医療,安心・安全の3分野における応用志向型の研究である。選考委員会委員長の相澤益男氏(内閣府総合科学技術会議議員)によれば,今回は,全国36の大学・研究機関から81件の応募があり,4段階の審査を経て,受賞者が最終決定した。今回の最終選考は,残った5名と面談形式で行った。昨年までは,基本的に書類選考だった。今回は,5人の受賞者が決まった後で,面談を行い,順位を正式決定したようだ。

細胞治療のコストを下げる

 1等賞(賞金400万円)は京都大学の上杉 志成氏(44歳,物質-細胞統合システム拠点 教授)が受賞した。同氏の研究の研究メンバーとして,京都大学の西川 元也氏(43歳,大学院薬学研究科 准教授)と同志社大学の小泉 範子氏(41歳,生命医科学研究科 教授)が紹介された。

 上杉氏が受賞した研究のタイトルは,「細胞治療を助ける化合物の開発」である。これまで,医薬品や農薬,生物研究のツールとして使用されてきた,生物活性小分子化合物の新たな利用方法を示した。すなわち,細胞治療を助ける小分子化合物を提案した。すでに複数の小分子化合物を開発しているが,「アドへサミン」と命名した小分子化合物は,培養ヒト細胞の接着と成長を促進する。この化合物を元にして,フィブロネクチンのように振舞う合成化合物を設計した。

 受賞代表の挨拶の中で,上杉氏は,細胞治療を助ける小分子化合物の意義を次のように語った。「細胞治療によって,これまで薬では治せなかった病気を治すことができると期待される。ただし,そのままでは高価で,恩恵に浴せる人は限られる。化合物の利点は,工業製品として安価に作れること。われわれは,細胞治療のコストを下げることを狙って,研究を続けてきた。10年,20年後に臨床で細胞治療が行われるようになっていると考える」(同氏)。