東芝は,2011年4月18日に,同日時点での東日本大震災に伴う東芝グループの対応について発表した(ニュース・リリース)。今回は,3月22日の発表に比べて(Tech-On!関連記事),節電などの電力不足の対応策や原子力発電所の安全確保に力点が置かれた内容だった。

 今回の対応策は6項目からなる。「1:節電対応策」,「2:福島原子力発電所の安全確保に向けた協力支援」,「3:東北・関東地域における電力供給不足の解消に向けた支援」,「4:被災者・被災地支援」,「5:従業員の安否確認」,「6:事業所・工場の復旧」の六つである。

 まず,1:節電対策である。東京電力管内における事業場の夏季の消費電力削減への対応内容を決めた。主な内容は二つある。一つは(a)長期夏季休暇の実施,もう一つは(b)各拠点の個別対応策である。

 このうち(a)の夏季休暇に関しては,6月中旬から9月末までの間,東芝グループ全体で輪番制にて数週間程度(連続または1週ずつ)の夏季長期休暇を設定した。例年の夏季休暇は1週間程度だが,今年は数週間に延長する。具体的には,事業所を複数の組みに分けて,1組を休業とする体制を構築することによって,東芝グループ全体として政府方針に沿った消費電力の削減を目標にする。

 この夏季連休は,夏季以外の土曜休日を振り替えることを予定している。さらに,夏季に勤務する週には平日と土曜日の振替も実施し,夏季平日の電力消費抑制に努める。また,上記の休日設定のみでは電力抑制が不足しているようであれば、始業時間の前倒しについても検討していく。

 (b)各拠点の個別対応策は以下の通りである。生産面では,上記のような労務施策と連動して,製造の一部を夜間・休日にシフトすることで,拠点内における生産設備の使用電力の平準化に努める。また,製造やサーバーの一部を東京電力・東北電力エリア外へ一時的にシフトすることや,開発設計者の一部については一時的な在宅勤務や西日本の拠点での業務従事とすることなども検討している。

 このほか,安全な職場環境を維持した上で,照明の削減や空調の温度設定・稼働時間の見直しや,自家発電設備の拡充など,可能な施策を積極的に進めることで,ピーク電力時の使用電力低減に努める。

原発の安全確保で毎日190人が現地作業

 次に,2:福島原子力発電所の安全確保に向けた協力支援である。福島第一原子力発電の安全確保に向けては,地震発生直後に本社と原子力のエンジニアリング拠点である磯子エンジニアリングセンターに専門の対策チームを設け,24時間体制で情報の収集分析や対策の立案を進めてきた。そうした中で,政府および東京電力からの要請を受けて,原子力技術者を東京電力本店や福島第一,第二原発に派遣し,技術的な支援・検討を行っている。また,東北電力の女川原子力発電所にも人員を派遣し、協力しているという。

 現在,ウェスチングハウス社,ABWR供給のパートナーであるショー・グループ,大手原子力関連機器メーカーであるバブコック&ウィルコックス社(B&W社),米国大手電力会社のエクセロン社の協力もあり,技術者を中心に約1400人の体制で対応している。このうち現地で支援活動を行った人数は累計で600人を超えた。平均190人以上が現地で毎日支援作業を行っている。

 また,東京電力に警報付ポケット線量計45個を提供し,冷却水ポンプ用電動機5台,バッテリー2000個,水中ポンプ150台,変圧器,分電盤,電源ケーブル等を納入した。さらにB&W社は,化学プラント等で使用実績のある同社が保有する防水性作業服全744着を東芝を通じて東京電力に提供した。ウェスチングハウス社は燃料プール等の状況確認が可能な軍用の無人ヘリおよびその運用サービスを東芝を通じて東京電力に納入した。

 なお,東京電力の要請に基づき,4月4日にウェスチングハウス社,ショー・グループ,B&W社の協力を得て,現在注力している安全保全に関する短期的対応および燃料取り出し,瓦礫除去,放射性廃棄物処理,環境モニタリング等の中長期的なマネジメントプランを提案し,4月12日にはエクセロン社の知見を加えた総合マネジメントプランを提出した。さらに,東京電力からの指示により,フランスのアレバ社や米国のクリオン社から水処理装置の提供を受けたうえで,東芝が放射能を帯びた滞留水の処理システムの計画を取りまとめた。

約750万kWの復旧に貢献

 3:東北・関東地域における電力供給不足の解消に向けた支援については以下の通りである。東芝グループでは,現在220人からなる対策チーム(上述の原発対応の1400人は別)が電力供給不足の解消の支援に当たっている。

 電力会社の要請に基づき,東京電力と東北電力の被災した火力発電所および変電所・開閉所など送変電設備の早期復旧支援や,定期検査中の火力発電所の運転再開前倒しに向けて技術員の派遣や部品・修理品の納期短縮,休止中の火力発電所の運転再開に向けての支援等を最優先にして協力している。今夏までに東京電力と東北電力管内で,当社支援担当分として,約750万kWの復旧に貢献していくとする。

義援金を5億円追加し,10億円に

 4:被災者・被災地支援については以下の通りである。東芝は震災発生当初に義援金5億円相当の支援を決定したが,今後の復興支援へのいっそうの協力のために5億円を追加し,総額で10億円規模とする。

 同社はこれまでに,避難所などに食糧や日用品、家電製品などの物資を提供し,エコノミークラス症候群診断用に超音波診断装置,仮設・復興住宅向けに省エネ型家電機器,仮設・復興住宅の共用棟(集会所)向けに太陽光発電システム・蓄電池・省エネ型家電機器を100棟分を提供した。

 被災地域における雇用創出に協力するための取り組みも行う。例えば,津波で大きな被害を受けた漁業の復興支援に向けて,漁業協同組合へ漁船を提供する。また,被災した電気店の復興支援対応として販売スペースや車両の提供、サポート人員の派遣などを行う。さらに東北地方にあるコールセンター機能の強化などを含めて,様々な形態での雇用創出の協力に努めていく。

 5:従業員の安否確認については以下の通り。4月15日現在で,東北・関東在住のグループ社員7万4104名のうち7万4103名の無事を確認している。引き続き1名の安否確認に全力をあげている。

TMDの深谷のライン,月末には全面稼動へ

 6:事業所・工場(事務所・営業拠点を除く)の復旧に関しては,以下の通りである。現在復旧作業中の主なグループ会社は岩手東芝エレクトロニクスと東芝モバイルディスプレイ(TMD)の2社とする。

 このうち,岩手県北上市にある半導体製造子会社の岩手東芝エレクトロニクスでは,4月18日から一部生産を再開した。なお顧客への影響を最小化するために,一部製品については,既に大分工場や姫路半導体工場,加賀東芝エレクトロニクスで対応している。

 埼玉県深谷市の東芝モバイルディスプレイの深谷生産ラインでは,3月28日に一部稼動を開始し生産を行ってきたが,4月末には全面稼動の予定とする。なお,一部製品については,石川工場での対応を実施している。