1985年7月〜2011年3月22日の間にAPNICが配布したIPv4アドレス個数の増加の様子を示した。グラフはAPNICの資料を基に、日経エレクトロニクス誌が作成。
1985年7月〜2011年3月22日の間にAPNICが配布したIPv4アドレス個数の増加の様子を示した。グラフはAPNICの資料を基に、日経エレクトロニクス誌が作成。
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 日本でのIPアドレスの割り振りや登録を担当する日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は2011年3月28日、「アジア・太平洋地域でのIPv4アドレスの在庫の枯渇が、2011年4月~5月中旬に前倒しされる可能性もある」と発表した(発表資料)。中国や日本、インドなどがIPv4アドレスの争奪戦を繰り広げていることが背景にある。

 IPv4アドレスは、IANAという組織が管理していた中央在庫が2011年2月3日に枯渇したばかり(関連記事)。残るは、世界に五つある「RIR(regional internet registry)」という組織の在庫だけになっている。その中で、最も早く枯渇しそうなのがアジア・太平洋地域を担当するAPNICの在庫だ。

 2011年2月ごろまでは、APNICの在庫の枯渇は「5~8月ごろ」(APNIC)という予想が多かった。ところが、「IPv4アドレスに対する需要が加速度的に増している」(JPNIC)ことから、枯渇予想時期は次第に早まり、ついに今回、4月中の枯渇の可能性をJPNICが発表する事態になった。

 アジア・太平洋地域では、2009年ごろから、中国のChina Mobile社(中国移動)、China Unicom社(中国聯通)、China Telecom社(中国通信)などがIPv4アドレスの争奪戦を繰り広げ、大量のIPv4アドレスを取得してきた。2009年5月以降の中国企業による、のべ取得数は1億1000万個超(「/8」ブロックが約7個分)に達している。

 2011年になってからはその取得競争に、日本からNTTコミュニケーションズやKDDI、インドの通信事業者などが参戦した。特にNTTコミュニケーションズは2011年2月、1度の申請で839万個超(「/9」ブロック1個分)のIPv4アドレスを取得。APNICでは、2005年2月のソフトバンク・グループによる約1678万個(「/8」ブロック1個分)の取得以来の大量取得となった。

 残るAPNICの在庫は「2011年3月28日時点で/8で2.64個」(JPNIC)。APNICは、在庫の残りが「/8」1個分になった時点を「枯渇」と定義している。以後は従来のルールによるIPv4アドレスの配布を終了し、アドレスの配布単位を1024個のブロック(/22)へと大幅に縮小する。ただし、このブロックがなくなる「完全枯渇」までにそれほど時間はかかりそうにない。このブロックは、/8 ÷ /22=約1万6000個しかなく、これをアジア・太平洋地域の通信事業者が奪い合う格好になるためである。


「日経エレクトロニクス」4月4日号では、IPv4アドレスの枯渇問題とその対策についての解説記事を掲載予定です。御一読いただけると幸いです。