東芝は,2011年3月22日に,今回の地震に伴う同社および同社グループの対応に関して発表した(ニュース・リリース)。これまでは,自社やおよびグループの被災状況の把握や復旧に重点が置かれていたが,今後は社会インフラや被災地の復興支援に軸足を移す。

 今回の発表では,まず,全体の体制について説明している。すなわち,同社グループは,地震発生直後から本社に社長を本部長とする「東北地方太平洋沖地震対策統括本部」を設置し,グループ全体の被災状況の把握と復旧,操業再開の活動を統括してきた。同社グループへの震災の影響が比較的軽微だったことから,同統括本部は,今後,被害を受けた社会インフラ・システムや被災地の復興支援に向けた取り組みを重点的に行うことにした。特に,社会インフラ・システムについては,既に顧客から復旧支援等の依頼を受けており、今後も可能な限り迅速に対応するよう全社を挙げて対応をするという(Tech-On!関連記事1)。

 また,従業員については,3月21日現在で,東北・関東在住のグループ社員7万4104名のうち,7万4103名の無事を確認した。引き続き1名の安否確認に全力をあげているとした。

東芝モバイルディスプレイの深谷のライン,立ちあがりに1カ月

 事業所・工場(事務所・営業拠点を除く)の状況に関しては,以下の通りである。同社の主要な事業所・工場である半導体事業拠点の四日市工場や大分工場ほか,社会インフラ事業拠点の京浜事業所,浜川崎工場,府中事業所,小向工場ほか,デジタル機器事業拠点の深谷工場,青梅事業所ほかについては,事業場によって若干の震災の影響はあったものの,すでに通常稼働となっている。

 一方,現在復旧作業中の主なグループ会社の状況は次の通りである。岩手県北上市にある半導体製造子会社の岩手東芝エレクトロニクスでは,3月28日から生産ラインの立ち上げを開始予定だが,顧客への影響を最小化するため,一部製品については,既に大分工場や姫路半導体工場,加賀東芝エレクトロニクスでの対応を開始した(Tech-On!関連記事2)。

 また,埼玉県深谷市の東芝モバイルディスプレイの深谷生産ラインでは,立ち上げに1カ月程度を見込む。このため,一部製品については,石川工場での対応を検討している。

 なお,調達品については現在鋭意調達先状況を精査中で,影響度について調査を継続するとともに,流通在庫や部品半製品含む在庫調査,取引先他拠点での製造振替,代替品採用の緊急手続き等,あらゆる手段を尽くして物品確保に努めていて,生産影響の最小化に全力を挙げているという。

 さらに,被災調達先が一刻も早く生産ラインの復旧を実現するために必要となる機器・部材などを同社グループから提供し支援に努めているとする。

社有寮の入浴施設を避難住民に提供へ

 今回の報告では,支援活動については以下のように説明している。同社は3月13日に,被災者の救済や被災地の復興に向けた義援金として,5億円相当の支援を行うことを発表しているが,支援先,支援方法に関しては,今後具体的な検討を進める。今回,現金に加えて,食糧や日用品,テレビ,パソコン,乾電池,ラジオ,洗濯機,照明器具などの物資提供の支援を実施または予定していることを明らかにした。

 また,3月18日に,東芝メディカルシステムズが日本赤十字社に小型超音波診断装置を10台提供することを申し入れた。長期にわたる避難所生活で心配される肺塞栓症(エコノミー症候群)などの診断などに活用されるという。

 さらに,災害救助法対象地域(岩手・宮城・福島全地域と青森・茨城・栃木・千葉・長野・新潟の合計167市町村)に住む個人の顧客が所有し,地震や津波で影響を受けた同社製テレビ,パソコン,家電商品について特別価格による修理対応を行うことを明らかにした(なお,パソコンについては3月15日に公表済みである)。

 そして,被災地に近い岩手東芝エレクトロニクスや北芝電機の社有寮の入浴施設を,燃料が確保され次第,避難住民に提供することを決めた。被災された人に社宅や寮などの社有施設を一定期間提供する準備も進めているという。

必要に応じて休日に振替操業

 このほかに,今回の報告では,計画停電への対応などについても説明があった。計画停電に関しては,全力を挙げて節電に取り組んでいること,原則として通常操業とした上で計画停電時間中については操業を止めていることに加えて,必要に応じて休日での振替操業を行うこと決めたことを明らかにした。