今回の地震の影響で,「乾電池」「携帯電話機用の充電器」「懐中電灯」「携帯型ラジオ」などが飛ぶように売れている。都心の量販店などでは,通常は店頭在庫が豊富なこれらの製品が,計画停電などに消費者の心理的な不安も手伝って店頭からほぼ姿を消している状況だ。関東での品切れの余波が,関西方面にも波及しているとの報道も出てきた。

 2011年3月15日午前。

 「これが最後です!」

 都心にある大型家電量販店のデジタル・カメラ売り場では,LEDを搭載した懐中電灯を手にした店員が声を張り上げていた。価格は3290円。決して安くはない金額でも,主婦らしき顧客が買い求め,在庫はあっという間になくなった。

 その1フロア上。携帯電話機売り場の近くでは,

 「緊急入荷です!」

という掛け声の中,乾電池を使う携帯電話機用の充電器がカゴに積み重なっていた。同じフロアのほかの場所はほとんど客はいないが,その周囲だけは人だかり。次々と充電器は売れていった。

 携帯型ラジオの棚には「誠に申し訳ございません。完売いたしました。次回入荷予定は未定です」の文字。据置型の小型ラジオは在庫が多少残っているようだが,携帯型ラジオの棚には全く商品がない状況だ。乾電池も,単1型,単2型は売り切れており,単3型,単4型も品薄で,棚にはほとんどない。

 家電量販店だけではない。

 近くの大型アウトドア用品店でも,「ランタン,懐中電灯,カセットコンロ,ガスカートリッジ,ホワイトガソリン,ヘッドランプ,電池は完売しました」と印刷された紙が店頭に張り出されていた。キャンプ用品のフロアには,緊急時に使えそうな商品はほとんど残っていない。

 被災地の仙台市周辺では,一部で昨夜頃から徐々に電気が復旧し始めている。その後,初めてテレビで被害の全容を知ってショックを受けている被災者もいる。それまで情報の取得ではラジオなどだけが頼りだったようだ。

 品薄の商品では,メーカー各社が増産を検討し始めている。パナソニックは,大阪府守口市の工場で生産している乾電池の増産を決めた。このほか,海外工場で生産した乾電池を国内に輸入するなどして品薄状態に対応する。

 同社は被災地への支援物資として,ラジオ1万台,懐中電灯1万個,乾電池50万個などを贈ることも決めている。ソニーもラジオ3万台を被災地に寄贈するなど,被災者支援の輪が広がっている。