小売業に関連する展示会「リテールテック JAPAN 2011」と「JAPAN SHOP 2011」が東京ビッグサイトで3月8日に始まった(3月11日まで)。リテールテック JAPANは流通に関する情報システム,JAPAN SHOPは商空間を演出する製品やサービスについての展示会である。筆者がTech-On!記事で主に担当しているディスプレイ分野では,毎年,数多くのデジタル・サイネージ(電子看板)の展示を目にすることができる。今回の両展示会では特に,タッチ入力や画像認識,AR(augmented reality:拡張現実)を活用した双方向機能を持つデジタル・サイネージの展示が目に付いた。

サイネージ,タッチ入力,AR……,双方向の仕掛けがてんこ盛りの陳列棚

 中でも,液晶モニタによるデジタル・サイネージを2台,さらにタッチ入力可能な液晶パネル,画像認識用のカメラ,AR機能と,様々な部品や機能を満載して,来場者の注目を集めていたのが,凸版印刷の店舗内設備である。これらを,商品の陳列棚とサンプルの供給マシンに組み合わせて,顧客との双方向のコミュニケーションを可能にした。この設備はリテールテック JAPAN 内で展示されていた(写真1)。

写真1 双方向機能を持たせた店舗内設備(凸版印刷)
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 向かって右側の商品陳列棚の上には,42型の液晶モニタが設置されており,その店のキャンペーンや他のおすすめ商品などの案内を表示できる。42型モニタの上にはカメラが付いており,どのような年齢,性別の客が,どれくらいの時間にわたって案内を見てくれたか,把握することができる。左側のサンプル供給マシンには,客がサンプルを受け取るために必要な会員認証のためのICカード・リーダーや,くじ引きなどに使えるタッチ入力可能な液晶パネル,商品説明のための32型の液晶モニタが設置されている。32型液晶モニタの上には,AR機能のために必要なカメラが付いている。

 同社が想定する代表的な利用の流れは以下の通りである。まず,店が会員に向けてサンプル・キャンペーンのメルマガを発信し,集客を促す。サンプルをもらいに来た客は,端末のリーダーにICカードをかざし,会員認証を行う。認証された客は,サンプルを取得するためのくじ引きに参加できる。こうすることで,参加回数を一人一回に制限することも容易になる。くじに当たった客はサンプルを取得できる。もちろん,“空くじなし”に設定することも簡単だ。次に,客が手にしたサンプルを上方のカメラに向けてにかざすと,サンプルを持つ自分の姿が32型液晶モニタに映し出される。サンプルの画像の周囲には,より詳しい商品情報が合成表示され,商品に対する理解を深められる。商品のメーカーにとっては,商品への理解を客に促すための良い機会となる。後日,会員認証のデータを基にしてサンプルを受け取った客にメルマガでアンケートを送り,客の声を聞くことができる。

 凸版印刷によると,店舗にとっては「店頭が活性化し来店頻度も向上する」,客にとっては「機械なのでサンプルを気兼ねなく取得できる上に商品への理解が深まる」,メーカーにとっては「多数の客の声を効率よく取得できる」というメリットがあるとする。2010年から店舗への試験的な導入が始まっており,2011年に入って本格導入への移行が進んでいるという。

ショー・ウィンドウや結婚式会場にも,双方向デジタル・サイネージ