ベンチャー企業の米Peel Technologies, Inc.（同社のWebサイト）は，同社の「Peel」と呼ぶテレビ番組ガイドのiPhone向けソフトウエア・アプリケーション（アプリ）とリモコン製品を2011年2月28日の週から発売する。同社は，テレビ番組を推薦する機能を含むテレビ番組ガイドのアプリを，2010年10月から既に無料で配布していた。今回販売を始めるリモコン製品は価格が99米ドルで，同アプリと共に利用するもの。同アプリとリモコン製品を用いることで，ユーザーがiPhone上に表示されている番組のアイコンを選択すると，その番組がAV機器で再生されるようになる。「我々が目指しているのは，できるだけテレビ・コンテンツを取り扱えるリモコン・システムを実現することである」（Peel社，Marketing, Vice PresidentのAlec Marshall氏）。
Peel社によると，現在，同社のiPhoneアプリ（Peel）のユーザーは約25万人に達しているという。Peelの利用を始めるときには，ユーザーは滞在する地域や利用しているテレビ事業者（ケーブルテレビや衛星テレビなど），年齢，性別を入力する。こうした情報から，アプリはユーザーが視聴できるテレビ番組表を作成して，ユーザーの好みと想定される番組を代表的なする画像をiPhoneのディスプレイに表示する。ユーザーが好みの番組のジャンルなどを設定することも可能である。
ここにリモコン機能が加わると，ユーザーがiPhone上に表示している番組の絵を押すだけで，テレビで番組の再生が始まるといった使い方ができる。番組選択の履歴は，Peelがユーザーに推薦する番組の選択材料にも利用される。さらに，このアプリにはユーザーが視聴する時間帯を参考にして，番組を推薦する機能もある。例えば，平日の朝7:30にニュース番組を見る履歴があれば，Peelは平日の朝7:30にニュース番組をiPhone上に表示する。
リモコン製品を同時に利用するのであれば，Peelは番組再生中にiPhoneをリモコンに変身させることができる。番組をテレビで映し出せるほか，iPhone上でのタッチ操作を利用しながら，音量を調整したり，HDD録画機を制御したりといった機能がある。
無線LANやZigBee，赤外線で構成するリモコン
iPhoneアプリのPeelと同時に利用するリモコン製品は，二つの装置で構成する。一つは，無線LANのルータに差し込むZigBee対応の装置である。もう一つは，ルータに接続されている装置から出力するZigBeeの信号を受けて，AV装置を制御するための赤外線の信号を出力する装置である。Peel社によると，iPhoneは個別のID番号を発信する。ルータに接続されている装置は，無線LANで接続しているiPhoneをこのID番号を利用しながらペアリングを行う。こうしたシステムを構築することで，iPhoneアプリの操作をAV機器を制御する信号に変えているという。なお，ユーザーのAV機器を制御できるようにリモコン製品をセットアップする所要時間は，3分以内としている。
現在，Peelは放送番組のみに対応している。HDD録画機に蓄積された番組やNetflixなどのVODのサービスには対応していない。だが，Marshall氏によれば，こうした機能の開発を進めているという。
Peel社の社内には，米Apple Inc.の「iTunes」のユーザー・インターフェース（UI）開発に係わっていた技術者や，コンテンツを推薦するアルゴリズムを開発した経験を持つ技術者がいるという。UIや推薦アルゴリズムといった独自技術は，同社の強さの一つだと主張する。現段階で同社のビジネス・モデルは，リモコン装置の販売のみから収入を得るというもの。「だが，我々のソフトウエアをライセンス供与する商談を数社と進めている」（Marshall氏）。
