Thunderboltのロゴ・マーク
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「Thunderboltは,業界にとってのブレイクスルーだ」(米Apple Inc.)――。

 Apple社は先週,同社のノート・パソコン「MacBook Pro」の新機種を発表し,そこに最大10Gビット/秒の高速インタフェース「Thunderbolt(サンダーボルト)」を採用したことを明らかにしました。Thunderboltは米Intel Corp.が「Light Peak」というコード名で開発を進めていた技術で,高速のデータ通信やHD画質の動画伝送を可能としており,既に複数の周辺機器メーカー(Western Digital社やLaCie社,Avid社など)が対応機器の発売を発表しています(LaCie社のThunderbolt対応機器のページ)。

 Intel社は,2009年9月に開催されたIDFで,Light Peakについて発表していましたが(Tech-On!の関連記事),当時から「Apple社が早期に採用する」という見方が業界に数多く出ていました。Apple社は以前から新規のインタフェース技術をノート・パソコンに採用することに積極的で,またコネクタ数を削減できるような集約型インタフェースを求めていることも述べていたためです(日経エレクトロニクスの関連特集)。

 一方のIntel社は,Light Peakの試作機などは見せるものの,その顧客企業名は明らかにしていませんでした。ただし,「2011年中に製品に採用される可能性がある」という見込みは示しており(Tech-On!の関連記事),今回Apple社が実際にMacBook Proに採用したことで,Intel社の目標とする搭載時期どおりに製品が登場したことになります。

業界へのインパクトとは

 このThunderboltの登場は,パソコンや周辺機器を開発するメーカーのみならず,AV機器やインタフェース関連の半導体/部品を手掛ける企業など,様々な業界の取り組みに影響を及ぼすことになります。まだインタフェースの技術的な詳細など詳しい情報は明らかになっていない段階ですが,少なくとも以下の三つの観点で,「Thunderbolt登場のインパクト」を見ていく必要がありそうです。それは,1)USB 3.0など,他のインタフェース技術への影響,2)ソニーなど他の機器メーカーへの影響,そして3)「光化」はいつ来るのか,という点です。

 まず気になるのが,次世代USBインタフェース「USB 3.0」への影響です。今回Apple社が採用した「Thunderbolt」は,最大10Gビット/秒と高速で,しかも電源供給が可能としています。こうした機能は,これからまさにパソコン搭載が進むと期待されていたUSB 3.0(最大5Gビット/秒,電源供給可能)の特性を凌ぐものです。しかも今回のMacBook Proでは,USB 2.0には対応しつつも,USB 3.0端子は備えていないため,あたかもApple社が「USB 3.0をスルーした」ように見えます。果たして今後Apple社はUSB 3.0をどのタイミングで,どのプラットフォームに載せていくのか,またはノート・パソコン系はThunderboltに集約していくのか。周辺機器メーカーの取り組みと共に,気になるところです。

 USB 3.0だけでなく,DisplayPortの役割や,HDMIとの関係にも影響がありそうです。Thunderboltを使えば,DisplayPortやPCI Expressのほか,DVIやHDMIの信号もやりとりできるということで,将来的にはThunderboltが多くのインタフェースの役割を代替できる可能性があります。こうなると,インタフェース業界全体のエコシステムが変化を迫られることになります。Intel社の周辺チップセットだけでなく,HDMIなどのインタフェースLSIやコネクタ,ケーブル,EMI対策部品などにも,Thunderboltの普及度合いによっては,今後影響が出てくる可能性もあります。

「Thunderbolt」だけなのか?