米XIUS社は2011年2月15日,インドのTata DOCOMO社と提携し,インドの一部でNFCを活用したモバイル課金サービスのトライアルを開始すると発表した。日本では携帯端末向けソフトウエア・プラットフォームであるAndroid 2.3でNFC機能がサポートされたことから,スマートフォン搭載のNFC機能を使った新しいサービスが注目されている。ところが,インドや南米などの新興国では,NFC搭載の携帯電話機やスマートフォンが普及するには時間がかかると予測されている。しかも,銀行などから後払い(ポストペイド)が一般的な先進国と異なり,通信代金支払いは前払い(プリペイド)である。そこで,XIUS社では異なる方法を使ってNFCをモバイル・ペイメントに使おうとしている。スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2011」に参加している同社のVice President & Head of SalesのUpendra Bhatt氏に,新興国流のNFCの使い方について聞いた。
―XIUS社がTata DOCOMO社に提供しようとしているNFCサービスはどのようなものか。
いわゆる電子看板だ。看板側にはNFCのリーダー/ライターと購入製品などを選ぶためのボタンが設置されている。看板に書かれている商品を購入したいユーザーは最初にNFCのタグをかざす。このときにタグに埋め込まれた識別IDから携帯電話機ユーザーの加入者情報をサーバー側で割り出す。次に購入したい商品のボタンを押すと,ユーザーの携帯電話に向けて携帯電話事業者から,その商品の購入確認のSMSが届く。これに対して,OKであることを返信すると,プリペイドの残高から商品の代金が引かれる。販売商品としては,ダウンロード型の音楽やゲーム,壁紙などでもいいし,レストランの支払いなどでもいい。
―NFCのタグはどのような形態で配布するのか。
カードとして配る形もあるし,シールとして配り,携帯電話機に張ってもらう方法もある。どのようにするかは,携帯電話事業者次第だ。
―看板のコストはどうか。
どのような機能を追加するかによる。基本的にリーダー/ライターおよび液晶の画面などからなるため,ベースラインは数百米ドル程度になる。
―携帯電話機にNFCが入ってくれば看板側をタグにするという考え方もあるが。
長期の方向としてはそうだ。しかし,世界的にNFCをサポートしたスマートフォンの出荷台数は少ない。インドや南米などの発展途上国では,数年後であってもNFC機能を持たないままだろう。実は,今回提供する仕組みは発展途上国だけではなく,先進国においても有効だ。先進国でも携帯電話機にNFCが普及するのを待つには時間がかかる。実際,米国の小売業者と今,サービス提供に向けて作業を進めている。