図1 「FlashLinq」のコンセプト
図1 「FlashLinq」のコンセプト
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図2 FlashLinqに対応する通信端末(左上)。スマートフォン(右下)と無線LANで接続している
図2 FlashLinqに対応する通信端末(左上)。スマートフォン(右下)と無線LANで接続している
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図3 FlashLinqを使ったSNSアプリの例。近くにいる友人が分かる
図3 FlashLinqを使ったSNSアプリの例。近くにいる友人が分かる
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図4 端末同士で接続を確立すると,情報をやり取りできる
図4 端末同士で接続を確立すると,情報をやり取りできる
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 米Qualcomm Inc.は,スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress」(2011年2月14~17日)において,端末同士がピア・ツー・ピア(P2P)で通信する無線通信技術「FlashLinq」(Tech-On!の関連記事)を実演した。端末間での通信にかかる全体の遅延時間は「数十ms」(Qualcomm社)であり,近くにいる人とほぼリアルタイムでコミュニケーションできることが利点の一つであるという。

 今回の展示では,FlashLinqに対応する通信専用の試作機を用いて,端末間で直接通信する様子を見せた。FlashLinq対応機と操作用のスマートフォンを無線LANで接続することにより,スマートフォン間で通信する状態を仮想的に実現した。

 FlashLinqの応用例として示したのが,近くにいる友人を探して,その友人にメッセージを送るソーシャル・ネットワーキング・サービスである。あらかじめ登録した友人の中で,約1km以内に存在する端末の所有者が「近くにいる友人」として自動で表示される。その友人を選択して接続を確立すると,割り当てられた搬送波を利用してメッセージを送受信できるというものだ。近くにある端末だけに広告を表示させる応用例も見せた。いずれも,基地局を通さずに通信する。

 端末の探索は,数秒おきに行うという。端末の探索および通信の範囲が約1kmなのは,端末の送信電波の強度を変えないためだ。「電波強度を上げれば遠くまで届くが,法規制の問題があるので現状の電波強度にした」(Qualcomm社)とする。

 移動通信サービスで用いている帯域と異なる帯域を補助的に使う。「携帯電話では,近くにいる端末と通信することも多い。FlashLinqは,場所の近さに関係するサービスを実現できるだけでなく,既存の帯域のトラフィックをオフロードできるという利点もある」(Qualcomm社)。

 今回の実演ではFlashLinqに5MHz幅の帯域を用いたが,帯域幅に制約はないという。「アクセス方式にOFDMAを使うため,周波数幅は柔軟に変更できる。さらにTDD(時分割多重)であるため,帯域を確保しやすい」(同社)とする。OFDMAのサブキャリア間隔は未公開である。今回の試作機ではFlashLinq専用のベースバンド処理回路を用いているが,「移動通信用のベースバンド処理と1チップに統合する場合は,多くの処理を共通の回路で実行できる」(同社)。