「2011年は,メードインジャパンの最高級コンパクト機で新しい市場を作っていく」

富士フイルムが3月5日に発売する「X100」
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 富士フイルムのデジタル・カメラ事業を統括する樋口武氏(取締役 常務執行役員 電子映像事業部長)は,2011年2月8日に開催したデジタル・カメラの新製品発表会で意気込みを語った。

 樋口氏が“最高級”と銘打つのは,2010年9月に開催されたカメラ関連の展示会「Photokina2010」で初めて披露したコンパクト型デジタル・カメラ「FinePix X100」だ。光学式(OVF)と電子式(EVF)を組み合わせたハイブリッド型のビュー・ファインダや,焦点距離23mm(35mmフィルム換算で同35mm)でF値が2.0の単焦点レンズを備える。

 日本での発売日は2011年3月5日。市場想定価格は13万円前後と価格下落が激しいコンパクト機としては,かなり高額な部類に入る。「Photokinaでの発表後,かなり好意的に注目された。高級志向がどこまで通用するのか,世に問うてみたい」と樋口氏は話す。日本での投入後,X100は海外にも展開する計画だ。

低価格機で広げた販路を中上位機種に生かす

 富士フイルムは,この2年ほどBRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)を中心とした新興国市場の開拓に力を入れてきた。2009年には価格が100米ドルを切るデジタル・カメラを投入するなど,低価格機種の製品ライン強化が話題を呼んだ。

 この取り組みが功を奏し,新興国を中心に出荷台数が順調に伸びた。2010年4~12月の出荷台数は890万台と,前年の同じ時期に比べて24%増加。世界の出荷台数シェアも2010年度に10%に到達する見込みだ。「日米欧は市場の伸びが鈍化しているが,新興国の需要はまだ旺盛。今後も,出荷台数20%増を維持する」と樋口氏は意気込む。

 この低価格機の投入によって固めた基盤の上に富士フイルムが構築する戦略の一つが高級機路線である。X100は「日本国内で手作りする」(樋口氏)ことを強力に打ち出した。2010年7月に子会社化したフジノンの光学技術をハイブリッド型のビュー・ファインダに惜しみなく取り入れ,レンズと撮像素子の最適化や筐体の素材・質感などにもこだわり抜いた意欲作だ。

 X100をフラグシップに,新興国では低価格機の投入によって広げた販路で中上位機種を訴求し,先進国ではこだわりのユーザーに買い替えを促す。低価格による数量拡大と同時に,収益性の高い中上位機種の拡販を進めることが,富士フイルムが目指す次のステップである。

 これを実現するために,X100とは別にもう一つ用意した材料が,同日に発表した上位機種「F550EXR」と「HS20EXR」の2機種に搭載した,新型の裏面照射型CMOSセンサ「EXR CMOSセンサー」である。