写真は56型の裸眼3Dテレビ
写真は56型の裸眼3Dテレビ
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写真は東芝の報道資料
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 東芝は,2011年1月6日に開幕する「2011 International CES」に先立って開催した発表会で独自の3次元(3D)映像戦略を明らかにした。「3Dは小型から大型まで,裸眼で」が戦略の骨子である。さらに言えば「大型裸眼3Dと4K×2Kテレビで,アナログ停波を乗り切る」ことだ。同社が展示する3Dディスプレイは裸眼方式だけで,メガネ式3Dテレビは皆無であることからも,その戦略が分かる。

 同社は既に2010年10月の「CEATEC JAPAN」で,インテグラル・イメージング方式の裸眼3D液晶テレビ(12型,20型,56型)を発表している。このうち,小型裸眼3Dテレビは2010年12月に発売になったが,「3Dはやはり大きな画面で見られなきゃ」という声に応えて40型以上の画面サイズで裸眼3Dを展開する。なお,記者会見場では56型が展示されていたが,「商品化に際しては,この画面サイズで行くというわけではない」(会場の説明員)と言う。展示会場のブースでは,このほか64型の裸眼3Dも展示する。

 東芝が採用しているインテグラル・イメージング方式は,光線再生方式とも呼ばれる。物体が発する反射光(光源以外の物体はすべて反射光で認識される)を多数ディスプレイ上で再生することで,3D映像を認識する方法である。これまで業界で発表された多くの裸眼3Dは多眼式であり,その点では変わりはない。違いは,光線の出射の仕方である。従来の3Dディスプレイは,複数の視差を持つ画像を眼に向け,それらを束ねて出射する。これに対し,インテグラル方式は光線を強制的に目に向けずに,平行光としてレンチキュラ・レンズから出射させる。これまでの方式に比べると効率は低いが,顔を横に動かした時に発生する雑音(ノイズ)が少なく滑らかに再生できる点で優れている。効率を取るか,顔が動いた時の不自然さが少ない方を取るかの違いである。

 2010年10月のCEATECでは56型のインテグラル方式3Dテレビが展示されていた。製品版の20型ではTNモードの液晶パネルが使われており見る角度によっては階調反転が生じていたが,今回の56型ではそれはない。VAモードの液晶パネル(画素数は4K×2K)が使用されていると思われる。インテグラル方式では,液晶の方式はIPSモードでもVAモードでも,種類は問わない。3D表示のために視野角は狭くなっているのだから,もともと視野角は狭いがコントラストに優れるVAモードの方が向いているとは言えよう。

 インテグラル・イメージング方式では水平方向に視差の異なる複数の映像を表示する。今回は,視差数は明らかにしていないが,以前の20型が9視差だったので,その前後の数だと思われる。「視差数と裸眼の解像度は相反するため,トレードオフを乗り越えるためにプラスの技術を入れます」と東芝ビジュアルプロダクツ社テレビ技師長の伊藤正之氏は言う。そのための切り札が超解像だ。4K×2Kの画素配置を工夫し,“2Dネイティブ”での4K×2K表示と両立させている。裸眼3Dテレビでは,画素内のRGBのドットを,ドット単位で活用する。「きちんとした解像度は出していきたい」と東芝 映像第1事業部長の村沢庄司氏は言う。商品化に当たっては,視聴者を特定する技術(センサーによって視聴者位置に最適な裸眼画像を提供する技術)も検討されている。

 筆者の第一印象としては,2010年10月のCEATECで披露された56型の試作機に比べ,視野角が比較的広くなり,明るさが格段に増した。課題は解像力と鮮鋭感だ。「研究開発センターの試作であり,絵づくりが全くされていない」(東芝)とのことだが,まったりとしたイメージで「もっと解像感が欲しい」と思った。“視差ジャンプ”の二重像は気になった。今回は試作機だから,これらは今後改良されるだろう。村沢氏は「12型や20型は画面サイズが小さいため,日本市場限定です。大画面・グラスレス3Dは全世界で,時間の経過と共に展開していきます。重要なポジションを占める商品にしたい。売り上げも伸ばしたい」と語った。