OpenNIの構造(OpenNI organizationの資料)
OpenNIの構造(OpenNI organizationの資料)
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 「Kinect for Xbox360」の距離画像センサ技術を手掛けるイスラエルPrimeSense社が,同技術をパソコンや家電向けにも本格的に展開し始めた。

 同社は,距離画像センサ技術を搭載したパソコン向けのユーザー・インタフェース装置「WAVI Xtion」を2011年第2四半期に投入する(発表資料)。台湾ASUSTeK Computer, Inc.との共同開発である。2011年1月6日から米国で開催予定の「2011 International CES」において,両社のブースで展示する。

 WAVI Xtionは,動画やインターネットを閲覧する際,ジェスチャー操作によってパソコンを操作するために用いる。WAVI Xtionは距離画像センサを搭載した「Xtion」と,無線通信機能を持つ「WAVI」から成り,パソコンの画面はWAVIによってリビング・ルームのテレビに表示する。

 PrimeSense社は2010年12月,Kinectをゲーム機だけでなくパソコンでも利用できるようにするためのドライバ/フレームワーク「OpenNI」を公開している(OpenNIのサイト)。OpenNIを用いると,KinectをUSB接続したパソコンにおいて距離画像の取得,ユーザーの姿勢の推定(簡易的なモーション・キャプチャー)やトラッキング,手のジェスチャー認識などが可能となる(日経エレクトロニクス関連記事)。今回のWAVI Xtionでも,このOpenNIのAPIを用いる。

デジタル家電にも波及

 PrimeSense社は,パソコンだけでなく家電の領域にも距離画像センサ技術やジェスチャー認識技術を展開する(発表資料)。中国の家電メーカーと組み,PrimeSense社の技術を搭載したデジタル家電を今回のCESで披露する。具体的には中国Hisense社,中国Haier社,中国TCL社などが,距離画像センサおよびジェスチャー認識技術を搭載したテレビを展示する予定である。また,フランスOrange Vallee社は,PrimeSense社の技術をSTBで利用するためのフレームワークやアプリケーションを展示する。Intel社のSoC「Atom CE4100」向けである。

 PrimeSense社は,距離画像センサを用いたこうした一連の製品の投入,およびOpenNIというAPIの公開によって,パソコンやデジタル家電においてジェスチャー入力を一気に普及させる狙いがあるようだ。

 ジェスチャー入力は,コストの制約もあり,以前は通常のカメラを用いた画像認識によるアプローチが主流になると見られていた。しかし,既に250万台以上の出荷実績があるMicrosoft社のKinectの登場,さらにはOpenNIというAPI/フレームワークの公開がテコとなり,デジタル家電やパソコンにも距離画像センサを用いたジェスチャー入力が広がるシナリオが明確になってきた(Tech-On!関連記事)。

 Cellのような高速なプロセサや高度な画像認識技術がなくとも,今回のWAVI XtionやKinectなどがあれば,ある程度,安定したジェスチャー認識を誰もが容易に製品に組み込めてしまう時代となった。今後,日本の家電メーカーが,PrimeSense社の技術を採用するアジアのメーカーにどう対抗していくのか,動向が注目される。