我々は,この1年で『日経エレクトロニクス』を26冊発行した。この中で読者の方々に好評だった記事は果たして何か。毎号,任意の読者にお答えいただいている「読者アンケート」から得たデータを基に割り出した“ベスト10”をご紹介したい。なお,12月13日号と12月27日号についてはこの記事を書いている12月末時点で,アンケート結果がまだ出ていないため,今回のランキングには入っていないのでご了承を。

 では,まず第10位の発表…と言いたいところだが,同率で4本の記事がランクインしたので,第7位ということで。その4本とは,2月8日号のNEレポート「iPhoneに続き新規市場を開拓できるか,Apple社が描くタブレット端末戦略」,3月8日号の特集「消える特許」,4月19日号の特集「その電子部品,ホンモノですか?」,そして5月3日号のNEレポート「テレビ事業で黒字続ける東芝,LEDを主力に,夏には3D」である。

 これらに続く第6位は7月26日号の解説「ガラリと変わった設計手法,「iPhone 4」の中身に驚く」,第5位は3月22日号のNEレポート「3Dテレビで早くも日韓対決,画質の良さをうたう日本勢」,第4位は5月17日号の解説「iPadのインパクトを検証する」となった。

iPhoneに続けとばかりに,国内でもスマートフォンが花盛りに

 以上を見ても分かるように,iPhoneやiPadなど“Apple関連の記事,強し”という1年だった。こうした中でランクインした「その電子部品,ホンモノですか?」は,これまでの弊誌の記事にはない一風変わったテーマだった。編集部内では企画段階で「とても面白そうだ」と非常に盛り上がったものの,いざ取材となると,新興国などで流通する“ニセモノ部品”を手掛ける黒幕(?)への接触は非常に困難であり,また被害者である日本の部品メーカーなどもその詳細な内実を語ろうとしない向きがあった。このため匿名で取材を受けていただくケースが多々あったが,他媒体にはない情報をお届けできたのではないかと自負している。取材中,各種情報を提供してくださった方々には改めて御礼を申し上げたい。

 さて,いよいよベスト3に入る。第3位は7月26日号の特集「そのタブレット,パソコンにあらず」。台湾で開催された展示会「COMPUTEX TAIPEI」での取材を通じて得た情報などがベースとなって生まれた企画だった。中国で販売されている「iPad」をまねた端末を独自に入手し,弊誌でお馴染みの“分解”記事も掲載した。

 続く第2位は,2月22日号のNEレポート「プリウスの試練,開発時の検証不備が表面化」。2010年初旬に社会的にも大きな話題となったトヨタ自動車にまつわる一連のリコールのうち,弊誌も大いに関心を持っていたハイブリッド車に関するニュースを取り上げた。私自身も豊田章男社長らが開いた会見に数回赴いて取材したこともあり,個人的にも印象深いニュースだった。ただ,あの一連の“騒動”は一体何だったのか,再検証する必要があるのではないかと思っている。ちなみに我々はこんな本も執筆したので,興味のある方はぜひご覧いただければ幸いである。

 そして2010年,最も好評だった記事は――1月25日号の特集「スマートフォン大競争」である。スマートフォンについては,もはや説明するまでもないだろう。iPhoneの登場をキッカケに注目されるとともに,米Google Inc.の携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォーム「Android」の存在も大きくクローズアップされた。

 実は発行当初,この特集について日経エレクトロニクスの編集部以外のスタッフからは「どこかで読んだことがあるような内容で,新鮮味がない」「何を言いたいのか,いまひとつハッキリしなかった」「記事化のタイミングが悪かったのではないか」といった辛口の評価を受けていた。まあ,こうした反応はよくあることなのだが,果たして読者の反応はいかに…と気を揉んでいたものの,「業界動向や世界での端末事情などが分かりやすくまとめられており,大変役立った」「スマートフォンを取り巻く関連企業の立ち位置,関係,現況が良く理解できた」「Google社がAndroidを無償提供する狙いが,周辺領域の参入障壁を下げ,自分たちがイニシアチブをとっているWebサービスの付加価値を高めることにあると分析されていたところはとても納得できた」などなど,好評だった。

 2011年も我々スタッフ一同,がんばりますので,日経エレクトロニクスをどうぞよろしくお願いいたします!