2010年,デジタル家電の世界で最も注目を集めた話題の一つが「3次元(3D)」であることに疑いの余地はないだろう。実際,ランキングの上位10本のうち,3Dに関する話題が4本と最多だった。
しかし,首位を獲得したのは3Dではなかった。ソニーがカメラ関連の展示会「PMA 2010」で発表した,ミラーレス方式のレンズ交換型デジタル・カメラの記事だった。ミラーレス機の登場は,デジタル・カメラの世界に大きな変革をもたらそうとしている。高級機種の代名詞である「一眼レフ機」を置き換えていく可能性が高いからだ。これは単に,新方式の製品の登場というだけでなく,これまで日本メーカーの独壇場だった市場が,海外からの新規参入によって大きく変わることを意味する。
日本勢にとって脅威の存在と言えるのが,韓国Samsung Digital Imaging Co., Ltd.である。同社がPMAで展示したミラーレス機「NX10」などに関する記事や,同社および富士フイルムが披露した「スイングパノラマ」機能に関する記事もベスト10にランクインした。Samsung社の動向は,カメラ業界でも注目の的である。
3Dでは,裸眼での3D映像表示に対応した携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS(スリーディーエス)」の詳細発表が2位になった。ソニーが家電展示会「CES」に展示した,25型の3D映像対応の有機ELテレビも7位に入った。(関連記事)
一方,3Dに関する“お祭り騒ぎ”とも言える家電業界の盛り上がりに,警鐘を鳴らす技術者の声を紹介した記事が,読者から多くの支持を集めた。3D映像はまだコンテンツが少なく,収益が上がるビジネスになるのか疑問。さらに,眼鏡を使う視聴スタイルが一般家庭に受け入れられるか,また人体への安全性に問題はないのかなど,家電メーカーがクリアすべき課題も多いという冷静な指摘である。
そして2010年のデジタル家電業界で忘れてはならないのが,米Apple Inc.によるタブレット端末「iPad」の登場である。消費者向けのタブレット端末は,過去に多くのメーカーが市場の開拓を試みて失敗してきた歴史がある。Apple社はその厳しい歴史を,自らのブランド力と製品開発力で容易に超えて見せた。その成功は,2010年後半に他のメーカーが続々とAndroidベースのタブレット端末を投入する引き金になったのである。
▼ 2010年「家電・PC」記事ランキング