【インタビュー】DISH Network社,Product Marketing,Vice President,Vivek Khemka氏に聞く

悪影響を受ける前に自ら先に進む

 Google TVをはじめとするネット・テレビの動きを,従来型の映像サービス事業者は懸念の目で見つめている。そうした中で,衛星放送大手のDISH Network社は,米Google社に協力することをあえて選んだ。DISH社のSTBにGoogle TVとの連携機能を組み込んだ。同社でこのプロジェクトを担当したKhemka氏が,その理由を明かした。

DISH Network社のKhemka氏

 STBをGoogle TVのようなオープンな基盤に対応させても本当に大丈夫なのかという懸念はよく聞く。だが,現実問題として,インターネットで配信される動画を楽しむユーザーは増えている。ユーザーが好むサービスの利用を止めることはできない。それならば,ビジネスに悪影響が生じる前に,自ら先に進んだほうが得策と考えた。

 DISH社の顧客は,田舎に住む高い年齢層が比較的多い。こうした顧客は,今のところGoogle TVを使うユーザー層ではない。「35歳以下で都会で住んでおり,最先端技術に興味を持っている」。これが代表的なGoogle TVのユーザー像だろう。若い世代の顧客が魅力を感じてくれるのであれば,Google TVとの連携機能は新規顧客の獲得と顧客の囲い込みで強力な武器になる。

放送番組とWebサービスの連動を可能に

 Google TVとSTBを連携させるために,機器間の通信をピア・ツー・ピア(P2P)で実現する独自プロトコルを開発した。この技術でGoogle TVを搭載した機器はSTBを自動認識する。

 Google TVとSTBを連携させることで,STBに内蔵したHDDへの録画機能をコンテンツ検索の対象にできた。映像コンテンツやWebコンテンツを検索すると,HDD内に録画した番組も検索結果の一覧に表示される。電子番組表とも連動しており,検索結果に表示された放送予定の番組を録画予約することも可能だ。

 ミニブログ「Twitter」との連携機能もある。「私は今,この番組を見ている」というつぶやきをTwitterに簡単に投稿できる。これらの処理は,STB側からGoogle TV搭載機にメタデータを送信し,それをGoogle TV側で処理することで実現している。

 今後,外部のソフトウエア開発者が,Google TV向けのアプリケーション・ソフトウエアを開発するようになると,さらに面白い展開になるだろう。テレビ番組と連動する専用ソフトウエアを開発できるからだ。これを実現するために,STBとGoogle TVを連携させる独自プロトコルは公開する方針だ。

 例えば,番組の放送日時などを設定しておき,番組を視聴した時にソフトウエアが自動的に起動するような仕組みを実現しておく。その番組の視聴時に関連するTwitterのつぶやきを流したり,同じ番組を見ているSNSの知人を画面上に登場させたりする。こうした応用事例が,今後多く登場することは間違いない。(談)