エレクトロニクス業界にとって積年の大テーマである「インターネットとテレビの融合」。この実現に向けた動きが米欧を中心に広がっている(関連の動向をまとめた『日経エレクトロニクス』の12月13日号特集「テレビ 最後の挑戦」はこちら)。
 2010年10月に搭載機器が姿を現したソフトウエア基盤「Google TV」は,氷山の一角だ。大手メディア企業やテレビ・メーカーに加え,インターネット関連企業,ベンチャー企業も入り乱れ,「リビングの王様」の主導権を奪い合う争いが本格化している。いったい今,テレビ分野で何が起きているのか。その取り組みを追う。
 第1回のテーマは,米国で台風の目になっている「Netflix」を軸にしたネット動画配信サービスの台頭――。

 2010年秋。米国の映像コンテンツ業界に衝撃が走った。DVDのレンタルや販売で米大手のBlockbuster社の破綻である。同社は,9月23日にニューヨーク南地区の破産裁判所に米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。インターネットを使って注文するDVDの宅配レンタル・サービスなどの新興勢力に押され,業績が悪化。負債額は約10億米ドルに達した。

Netflix社は宅配レンタルで急成長した

 長年,米国でレンタルビデオの顔だったBlockbuster社が倒れたことを,映像コンテンツ業界は一種の警告として受け止めたようだ。直接の引き金となったのは,宅配レンタル・サービスの普及だが,その背後にインターネットを使った動画配信サービスの本格化が見えているからである。

米国でテレビ向け配信の標準に

 台風の目になっているのは,Blockbuster社に代わって台頭した米Netflix社だ。1997年に設立した同社は,定額制の月額料金でDVDをレンタルできるサービスで急成長した。レンタル店に足を運ばなくてもDVDを借りることができ,郵送で返却できる利便性が国土の広い米国で顧客の琴線に触れた。

 Netflix社の登録ユーザーは,2010年9月末時点で1690万人。同年第3四半期の売上高は対前年同期比30.7%増の5億5300万米ドル(1米ドル=84円換算で約464億円),純利益は同25.9%増の3700万米ドル(同31億円)に達した。

 同社が2007年に開始したのが,DVDレンタルの会員を対象に映画などをストリーミング配信するパソコン向けのVODサービスだ。開始1年後には定額制で配信動画が見放題のプランを用意し,宅配レンタルと同じ環境をWebサービスでも実現した。

ネット対応の薄型テレビでの採用が進む

 Netflix社が配信する機器はパソコンだけではない。最大の狙いは,むしろテレビである。薄型テレビをはじめ,Blu-ray Disc(BD)プレーヤー,家庭用ゲーム機など多くの機器で同社の配信サービスを視聴できる機能を標準搭載する動きが,この2年ほどであっという間に広がった。2010年9月には,自前のコンテンツ配信基盤にこだわってきた米Apple社のセットトップ・ボックス型端末「Apple TV」でも採用された。今では,搭載機器が200機種以上に上る標準サービスになりつつある。