シャープのLED電球。独自のLEDデバイスを採用するとともに,電源ユニットを小型化した。上半期のランキング2位から
シャープのLED電球
独自のLEDデバイスを採用するとともに,電源ユニットを小型化した。上半期のランキング2位から。
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 パワー半導体やLED,太陽光発電,蓄電池,そしてスマートグリッドまで・・・。こうした言葉がニュースに載らない日はないというほど,2010年は環境負荷の軽減につながる技術に高い注目が集まった1年であった。では,さまざまな話題があった中で,どのようなニュースの関心度が高かったのだろうか――。環境負荷軽減につながる技術の話題を取り上げてきたTech-On!のクローズアップ・サイト「グリーン・デバイス」の全記事について,アクセス数が多かったものをランキング形式で表し,関心度の高さを探ってみた。

 グリーン・デバイスで掲載する分野は昨今の注目度の高まりがあって,話題の移り変わりや技術の進展が早い。そこで,上半期(2010年1~6月)と下半期(2010年7~12月)に分けてニュース・ランキングを抽出した。まずは,上半期のトップ10を見てみよう。

第1位●「スマートグリッドで日本外しが始まった」,シリコンバレーのVCが警鐘鳴らす
第2位●シャープが小型LED電球を発売,LEDモジュールと電源ユニットを小型化
第3位●ソニーの最新液晶テレビ,LEDバックライトはどうなっているのか?
第4位●体内に埋め込み可能な「発電ゴム」,Princeton大が開発
第5位●「世界トップ・クラス」の東工大のスパコン,今秋に稼働へ
第6位●東京電力,9万台のスマートメーターを使う実証実験,マルチホップ通信を利用
第7位●【上海万博】日本館,開幕3日目の「行列」の長さはトップタイ
第8位●省エネ革命の主要デバイスとして注目される次世代パワー半導体
第9位●「景気回復期に合わせ高い成長性を追及」,三菱電機が経営方針を発表
第10位● LED電球のコストを分析,普及の条件を探る

 このランキングの中で傾向を見いだすとすれば,スマートグリッド関連記事とLED関連記事がランキング上位に来ていることが分かる。スマートグリッド関連記事は,第1位と第6位,第9位の3件。第1位の記事は,米オバマ政権の下,スマートグリッドのさまざまなプロジェクトが動き出した米国において,日本はどのように見られているのかを取り上げた記事である。「日本は環境技術に優れる」といった話はよく聞かれるが,米国ではこのような日本をライバル視しているという。日本の環境技術を米国をはじめとする海外に売り出すには,日本企業との協業のメリットをアピールする必要性があるとみる。

 第6位の記事は,いよいよ日本でもスマートメーターの大規模実証実験が行われることを報道したものである。スマートメーターの導入は,米国や欧州,中国など日本以外,とりわけ電力網の信頼性が必ずしも高くない地域で先行する形である。既に信頼性の高い電力網を持つ日本において,スマートメーターが生み出す利点とは何か。東京電力では例えば,電力の利用状況を「見える化」し,需要家に対してWeb上で時間帯ごとの電力使用状況を知らせることや最適な電気契約の内容などをアドバイスすることなどを挙げた。

 第9位の記事は,三菱電機が経営方針説明会で明らかにした内容を報道したもの。この説明会で同社は,スマートグリッド関連事業やパワー半導体事業,太陽光発電システム事業といった環境や社会インフラなどにかかわる部分に力を入れると語った。2020年以降の送配電網を想定した実証実験設備を自社内に構築するなど,今後大きく拡大するとされるスマートグリッド関連市場に対する同社の意気込みを示した。パワー半導体事業については,次世代材料のSiCを利用したパワー半導体素子の開発を積極的に進めるとの考えを示し,事実,下半期にSiCパワー半導体を実用化した。

 なお,パワー半導体に関する記事は,第8位にもランクインしている。この記事は,アイサプライ・ジャパンの南川明氏がパワー半導体市場を見通したもの。エネルギー産業に使われる機器では,全半導体に占めるパワー半導体の割合が50%を超える場合は多いという。この割合は,10%程度であるパソコンや携帯電話機,AV機器などに比べてかなり高い。エネルギー関連機器におけるパワー半導体の重要を如実に表している。

2009年下期から始まったLED電球ブームが続く


 一方,LED関連記事は第2位,第3位,第10位に3件入った。第2位は,E17形の口金に対応する小型LED電球とE26形対応のボールLED電球を,シャープが市場投入したという記事である。LED電球は2010年の代表的なヒット商品といえる。まだ一般的な大きさのLED電球が中心であるが,シャープがここで発表したLED電球はより小型の白熱電球の代替,そして100W白熱電球の代替を狙ったものである。LED電球が市場で話題を集めるようになったキッカケは,シャープが2009年に従来の半額近い低価格でLED電球を売り出したことがある。シャープがLED電球でラインアップを拡充したことで,「今度も何か起こるのでは」といった期待が,記事をランキング上位に押し上げたのであろう。

小型LED電球の開発では,電源の設計を改良して電解コンデンサを省くといった電源回路の小型化がカギになったという。電解コンデンサは寸法が大きいため,小型電球の筐体に電源回路を収めるための障害になっていた。

 第10位もLED電球の記事である。ここでは,テクノ・システム・リサーチの太田健吾氏が,低価格化が著しいLED電球のコストを分析している。同氏の分析によれば,LED電球の市場価格の急速な値下がりに対し,メーカーは開発費や組立費の抑制で対応してきたという。ただ,部材の低コスト化は市場下落のペースに追いついていないとの見方を示した。

 なお,第3位はLEDといっても,LEDバックライトの記事である。ソニーが2010年2月に市場投入した液晶テレビは,普及モデルとして同社が本格的にLEDバックライトを採用したもの。この液晶テレビに使われるLEDバックライトの構造を取り上げた。画面の明るさを均一にする工夫や,LEDの配置方法などを記事で紹介した。