ものづくりの基盤技術である金型。2010年は、その金型業界にとって激動の1年だった。グローバル化などで製造業を取り巻く環境が大きく変わる中で、金型の使い手も造り手も次の一手を模索している。

経営不振で業界2位と3位が合併

2010年9月17日の記者会見で握手する富士テクニカ代表取締役社長の糸川良平氏(左)と宮津製作所代表取締役社長の宮村哲人氏(右)

 まず取り上げるべき出来事は、富士テクニカと宮津製作所(本社群馬県・大泉町)の合併だろう。両社は2009年の国内金型生産額でシェア2位と3位のプレス用金型メーカーだが、いずれも経営不振に陥り、企業再生支援機構による支援(53億円の出資や債権の買い取りなど)を受けて再建を図ることになった。ある金型メーカーの経営者は、その衝撃をこう語る。「プレス金型で国内シェア2位・3位は、すなわち世界でもシェア2位・3位ということ。その技術力をもってしても利益が出ないのだから、金型産業自体の在り方が根本から問われているのかもしれない」。

『日経ものづくり』2010年11月号の表紙

 『日経ものづくり』では、この発表の前から金型に関する特集を企画していたので、合併の話題も2010年11月号特集「金型神話の終焉」に掲載した。最新の動向を記事に盛り込めたという点では良かったのだが、決して明るい話ではないので、複雑な気持ちだったのを覚えている。そのため、特集では後ろ向きな現状分析だけにとどまらず、新境地に挑む金型メーカーや、金型を使うセットメーカーの取り組みを紹介した。「金型神話の終焉」という特集タイトルについては、今までのやり方に固執するのではなく、時代に合った技術力の生かし方を考え、再び輝きを取り戻してほしいという思いを込めている。

〔日経ものづくり2010年11月号特集〕
金型神話の終焉
〔特集記事の内容に触れたTech-On!のブログ〕
金型を内製する理由
金型の使い手が内製を始めると金型メーカーはどうなるか

「金型の病院」を目指す