Haier社が試作したワイヤレス給電対応テレビ
Haier社が試作したワイヤレス給電対応テレビ
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 電源ケーブルを使わずに,無線で電力を供給するワイヤレス給電。2010年は,さまざまな企業が,その取り組みぶりを明らかにした1年だった。

テレビもワイヤレスで給電

 2010年のワイヤレス給電は,1月に開催されたCESにおける,衝撃のデモから幕を開けた。中国Haier社が試作した「線の無いテレビ」である(Tech-On!の関連記事)。米WiTricity社(米Massachusetts Institute of Technology(MIT)のMarin Soljacic氏らが立ち上げたベンチャー企業)のシステムを使い,100Wの電力を1mの距離で伝送できる。映像コンテンツはイスラエルAMIMON社のWHDIを使って無線伝送することで,「ケーブルフリーのテレビ」を実現した(Tech-On!の関連記事)。

 これまでワイヤレス給電のアプリケーションといえば,携帯電話機など小型機器が中心とみられていたが,これによって家庭のリビングルームに設置したAV機器に,無線で電力を供給するという利用シーンもあり得ることを,業界に強く印象付けた。

 実際,ワイヤレス給電の法制度などを検討しているブロードバンドワイヤレスフォーラムでは,デジタル家電機器から白物家電,さらに電動車両や産業機器に向けたアプリケーションも想定した議論を計画しており(Tech-On!の関連記事),総務省もこうした活動を支援していく方針を示している(Tech-On!の関連記事)。

NTTドコモもWPCの取り組みを評価

 2010年に大きな注目を集めたもう一つの話題が「WPC(wireless power consortium)」の活動である。オランダPhilips社や三洋電機,フィンランドNokia社,韓国Samsung Electronics社などが加盟する団体だったWPCだが,今年に入って日スウェーデン合弁のSony Ericsson Mobile Communications社や,韓国LG Electronics社も加盟し,携帯電話機の大手メーカーがこぞって加入する団体となった(Tech-On!の関連記事)。このほか7月には,非接触充電技術に強みを持つパナソニックもWPCに加盟した(Tech-On!の関連記事)。

 2010年3月にはスマートフォンやデジカメなど,出力5W以下の機器に向けた伝送仕様を策定し,会員企業向けに公開済みだ(Tech-On!の関連記事)。また同7月には,ノート・パソコンや電動工具など出力120W以下の機器に向けた仕様の策定も開始するなど,仕様策定を活発化させている(Tech-On!の関連記事)。規格に準拠した製品であることを示す「Qi」マークの認証も始まり,対応機器がじわじわと登場しつつある(Tech-On!の関連記事)。

 今年のWPCに関する話題の中でも,業界に大きなインパクトを与えたのが,NTTドコモの対応だった。同社は2010年10月のCEATECにおいて,WPC準拠のシステムを実演したほか(Tech-On!の関連記事),同12月には,WPCの活動(業界標準方式を策定するなど)への一定の支持を表明したのである。