大容量・大出力リチウムイオン2次電池の実用化を目指しているベンチャー企業のエナックス(ENAX、東京都文京区)は、2011年2月に愛知県常滑市に常滑事業所を設け、電気自動車向けの大容量・大出力リチウムイオン2次電池の生産を始める。同事業所は「中部国際空港(セントレア)の近くで、電気自動車向けに1年当たり1000台規模の電池を生産する能力を持つ計画」と、小沢和典代表取締役社長はいう。電気自動車1000台規模とは三菱自動車の「i-MiEV」、日産自動車の「リーフ」に搭載する規模の電池容量換算での話だが、同社は主に中国の電気自動車向けを想定しているため、電池容量の詳細は不明である。

 1996年4月に創業した同社は、平板型という独自構造の大容量・大出力リチウムイオン2次電池の実用化をノート型パソコンや業務用電池向けに図ってきた。2010年8月に、同社は株式会社産業革新機構(INCJ)と投資契約を締結し、産業革新機構がエナックスによる第三者割当増資を引き受けることで合意した。同時にベンチャーキャピタルのジャフコ(JAFCO)も第三者割当増資によるエナックスへの追加出資に合意した。この結果、エナックスは合計約40億円の資本調達に成功したとみられている。

 今回、同社が常滑事務所を設けるのは、この調達した資金を用いて製造能力を高める事業投資である。さらに、2011年夏には中国の上海市に主力となる新工場を設け、稼働させる計画である。これは、同社が中国の自動車技術開発センター(CATARC)と自動車エンジニアリング会社のIATの2者と合弁会社として設立したCENATが、電気自動車向けに電池を製造する計画を具体化する一環である。

 小沢社長は「大容量・大出力リチウムイオン2次電池というと電気自動車向けとみなす傾向が日本では高いが、当社は太陽光発電や風力発電向けの用途も中核に据えており、この分野をかなり重視する戦略をとっている」という。2010年8月から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業によって、北陸電力と100kWh規模の系統連系安定化蓄電システムの開発を始めている。風力発電などによる電気エネルギーを系統電力網につなぐ際の蓄電システムの実用化を目指している。