コンテンツIDの仕組みを示したスライド
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「Play both videos at match offset」ボタンを押して,映像がマッチした場面から,オリジナルの映像と著作権を侵害している映像を並べて再生したところ
「Play both videos at match offset」ボタンを押して,映像がマッチした場面から,オリジナルの映像と著作権を侵害している映像を並べて再生したところ
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 米Google Inc.の日本法人であるグーグルは2010年11月24日,動画共有サービス「YouTube」の著作権管理ツールについて説明した。具体的には,著作権侵害を自動的に判別する「コンテンツIDシステム」である。

 YouTubeでは従来,著作権を侵害した動画がいったん削除されると,それと同じ動画(ハッシュ値が同じ動画)を公開できなくなる「MD5ハッシュ」,著作権侵害を繰り返すユーザーのIDを削除する「3ストライク」,著作権者が著作権侵害の動画をまとめて削除できる「削除ツール」といった著作権対策を行ってきたという。これらに加え,2007年10月から運用を開始したのがコンテンツIDである。説明を行ったグーグル コンテンツパートナーシップ統括部長の水野有平氏は「開発に数十億円を投じている」と強調した。

 著作権を持つコンテンツ・パートナーは,著作権を守りたい動画をYouTubeのバックエンドにアップロードする。これは,その映像を識別するためのIDファイルを作成するもので,公開はされない。アップロードの際には,「映像の公開を許可する/許可しない」といったポリシーも一緒に登録する。もし,一般ユーザーがその映像を含む動画をアップロードしようとすると,同じものであると自動的に判別し,ポリシーに従った処理を行う。例えば,公開が許可されていない映像は公開されず,アップロードしたユーザーにも見えなくなる。著作権侵害を検知した場合には,公開が許可されている/されていないにかかわず,映像をアップロードしようとしたユーザーに「著作権を侵害している」という内容のメールが届く。同時に,コンテンツ・パートナー側にも連絡される。

 IDファイルは,動画の個々のフレームの差分を数値化したものだという。このため,テレビ画面を撮影し直した「再撮」と呼ばれる映像であっても検出が可能だとする。動画の一部に著作権侵害の映像が使われているような場合も検出できる。管理ツールに用意されている「Play both videos at match offset」というボタンを押すと,映像がマッチした場面から,オリジナルの映像と著作権を侵害している映像を並べて再生できる。

 実際には,コンテンツ・プロバイダーがオリジナルの動画を登録したときには,既に著作権侵害の映像がアップロードされていることも多い。このためYouTubeでは,過去にアップロードされた動画にさかのぼって著作権侵害をスキャンしている。スキャンする動画は,1日に100年分にも及ぶという。

 グーグルによると,コンテンツIDを採用したパートナーは,米国の主要メディア企業など全世界で1000以上。登録されているIDファイルの数は400万件以上,時間にして約30万時間分である。日本でも,コンテンツIDを採用したパートナーは2009年の約2倍に増えたとする。例えば,テレビ朝日はコンテンツIDを効率よく登録できるシステムを構築したという。