今回規格が決まったランプの口金 東芝ライテックのデータ。
今回規格が決まったランプの口金 東芝ライテックのデータ。
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 LEDを光源に使う直管形LEDランプについて,日本電球工業会(JELMA)は2010年10月8日に規格「L形口金付直管形LEDランプシステム(一般照明用)」(JEL801:2010)を制定した。オフィス・ビルなどで一般的に使われる直管形蛍光ランプの代替として,直管形LEDランプへの期待が膨らんでいる。韓国製などの日本で販売される直管形LEDランプはあったが,取り扱うのは中小企業が中心であり,規格がないために主要なランプ・メーカーは製品投入に二の足を踏んでいた。今回,規格が制定されたことで,直管形LEDランプの普及に弾みがつきそうだ(Tech-On!関連記事)。

 直管形LEDランプについては,ランプの互換性や明るさ,重さ,安全性などを課題とする声があった。今回の規格は,こうした不安要素を払拭するための内容を盛り込んでいるという。JELMAの専務理事である武内徹二氏と技術部長である八木敏治氏に,規格策定の背景や規格の特徴などについて聞いた。(聞き手は,大久保 聡=日経エレクトロニクス)

――規格制定に至った経緯を聞きたい。
JELMA 照明に使うランプはまず,安全性や互換性を確保していなければならない。現在,市場に出回る直管形LEDランプは,照明器具に対して電源工事が必要なものや,蛍光ランプの代わりに器具にそのまま取り付けられるものなど複数ある。さらに,電力投入が一般的な蛍光ランプのようにランプの両端のものもあれば,片側からのみ投入するものもある。これでは,ランプの互換性があるとはいえない。

 それにもかかわらず,ランプの口金には直管形蛍光ランプと同じ「G13」を用いているものがほとんどである。そのため,消費者がLEDランプを誤って互換性のない器具のソケットに接続する状況が出てきてしまう。さらに,日本国内にはG13の口金を備える照明器具は,古いものから最新鋭のものまでいろいろとある。電源回路に違いがあるので,どの照明器具でも蛍光ランプの代わりにLEDランプを使えるという状況とはいえない。

 現在,市場に出回る直管形LEDランプはあまり多くなく,売り手側が買い手側(消費者)に正しい使い方を伝えられる状況にある。だが,いずれ同ランプの流通量が増えると,こうした状況は続かず,誤使用が起こる可能性はとても高くなってしまうだろう。照明に使うランプは,何億個も出回るものだ。仮に,誤使用による事故の発生頻度がppmオーダーだったとしても,年間に数十件も事故が生じることになる。JELMAとしては,G13に接続できるすべての直管形蛍光ランプに安全の「ハンコ」は押せない。

 だからこそ,直管形LEDランプの規格策定に当たり,口金をG13とは変更することにした。それが「L形」と名付けた口金になる。こうすることで,直管形蛍光ランプを使ってきた照明器具に,直管形LEDランプを接続できないようにした。