図1 インドにおける売上高
図1 インドにおける売上高
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図2 海外売上高比率
図2 海外売上高比率
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図3 インドの電力需要
図3 インドの電力需要
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図4 鉄道分野における需要
図4 鉄道分野における需要
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図5 昇降機市場
図5 昇降機市場
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図6 FA市場
図6 FA市場
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図7 エアコンの需要
図7 エアコンの需要
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 三菱電機は,インド市場における事業を強化する(発表資料)。同市場における2009年度の連結売上高は約250億円(図1)。これを2015年度には,「約3倍の750億円にしたい」(同社 常務執行役 国際部長の笹川隆氏)。

 インドにおける事業拡大を図るのは,三菱電機として海外売上高比率を高める狙いがあるからだ。2009年度の同社の連結売上高は3兆3533億円。このうち海外売上高は1兆905億円と全体の32.5%ほどを占める(図2)。今後は連結売上高を2007年度と同じく,再び4兆円以上にするために,「海外売上高比率を相当上げないといけない」(三菱電機の笹川氏)。その一環として,インド市場で事業を拡大する。

 三菱電機は,電力や鉄道,昇降機(エレベータ),パワー半導体,FAシステム,空調システムなどにおけるてこ入れ策を紹介した。まず,電力事業では,今後年率7~8%で伸張する電力需要に応じるために,火力発電事業の拡大と現地でのタービン発電機の製造,揚水発電の受注,変電事業への参入に取り組む(図3)。中でも,インドではヒマラヤからの水資源が豊富なため,揚水発電が多いという。「揚水発電はうちの得意分野」(同社の笹川氏)と意気込む。

 鉄道事業に関しては,今後の路線拡張や電車需要の伸びに応じて,拡大する考え。例えば,「インド国鉄」や都市交通向けで年間500両以上の電車需要が長期的に見込めるという(図4)。同社は車両用電機品において,既に「デリー地下鉄」の受注実績を持っている。この実績を生かし,「ムンバイ地下鉄」や「バンガロール地下鉄」の事業案件の受注にも成功したという。

 昇降機事業では,現在「プレミアム」と呼ぶ高級品を中心に手掛けているが,今後はさらに安価な「ミドル」と呼ぶ中級品での受注拡大を図る。生産拠点はタイである。なお,三菱電機によれば,インドにおける昇降機市場は,2009年で2万1000台(実績),2010年で2万9000台になる見込みだという(図5)。

 パワー半導体は,現在の無停電電源装置(UPS)に加え,電車や再生可能エネルギー・システム,エアコンのインバーターなどに向けて拡販する考えである。

エアコン事業を100億円規模に


三菱電機の予測によれば,インドにおけるFA市場規模は金額ベースで,年率10%以上で伸張するという(図6)。これに伴い,販売体制の強化を図る。

 またエアコン市場も,オフィス需要の増加と富裕層や中間層の拡大に伴って,拡大を続けると予測する。例えば家庭用エアコンは台数ベースで年率20%,ビル用マルチエアコンは同15%で伸びるとみる(図7)。この市場拡大に向けて,代理店販売ではない直接販売の拡大や中間層に向けた製品の拡充,アジア地域向け業務用エアコンのタイ工場での生産などに取り組む考え。これにより,現在10~20億円ほどの空調システム事業の売上高を,2015年度までに少なくとも100億円以上にしたいとする。

 こうしたインド事業の強化のために,三菱電機は総合販売会社「三菱エレクトリック・インド社(Mitsubishi Electric India Pvt.Ltd.)」を立ち上げる(発表資料)。これまで,本社がシンガポールにある三菱エレクトリック・アジア社の支店として設置していた,グルガオン支店(ニューデリー近郊)とバンガロール支店の二拠点を現地法人化したものである。既に登記済みで,遅くとも2010年11月30日から営業を開始する予定である。人員数は約60名(2011年度計画)。

 新会社は,パワー半導体やFAシステム,空調システムの販売およびサービスを手掛ける。そのほか,電力や鉄道,昇降機などの事業支援を行う。2015年度で200億円の売上高を目指す。