右側の触力覚提示装置を使って,画面上の物体に触ったような感覚を実現している
右側の触力覚提示装置を使って,画面上の物体に触ったような感覚を実現している
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4本指による触力覚の提示実験(ビデオ展示)
4本指による触力覚の提示実験(ビデオ展示)
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NHK技研が考える「触って伝わるテレビ」のイメージ
NHK技研が考える「触って伝わるテレビ」のイメージ
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 NHK放送技術研究所(NHK技研)は,2010年10月5~9日に幕張メッセで開催している「CEATEC JAPAN 2010」において,ディスプレイの画面に表示した3次元(3D)物体をあたかも触ったかのような触力覚を実現する技術のデモを展示した。触力覚提示装置の先に取り付けられたペンを来場者が動かすと画面上のポインタが移動し,物体が存在する部分ではペンが動かなくなるよう反力をフィードバックすることで,画面上の物体をポインタで触っているような感覚を実現した。将来的には,視覚障害者や視覚情報が使えない状況に向けて「触って伝わるテレビ」を実現することを目指しているという。

 触力覚提示装置には,米SensAble Technologies, Inc.が販売する「PHANTOM Premium」を使用した。NHK技研が開発したのは,画面上の物体と触力覚提示装置を連動させるソフトウエア。3D物体の手前側だけでなく,物体に隠れた裏側を触る感覚も実現している。ポインタが3D物体に近づくと磁石のように引き寄せられるようにパラメータを調整することで,3D物体を触りやすくしている。今後の課題としては,「現実の物体の硬さなどの情報をどう取得するか」「生のデータからどこまで間引くか」「触力覚をどのように提示するか」の三つがあるという。

 将来的には,ペンだけでなくグローブ状のデバイスを使って皮膚の感覚を実現したいとする。例えば,ペンで物体の角を認識するにはペンを動かす必要があるが,触っただけで角を認識できるような感覚の提供を目指す。究極的には,デバイスなしで触力覚を実現するのが理想だという。それを実現する技術としては,超音波による弱い力の伝達や,実際の操作より視覚情報を意図的に遅らせることであたかも力が発生しているように錯覚させる手法などが利用できるという。