ドイツの放送局の放送済みの定時ニュースを選ぶ画面
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右 坂本祐司氏(ソニー・ホームエンターテイメント事業本部企画戦略的部門長)<br>左 「RAVIA Internet Video」のソフトウエアを開発した平野視氏(ソニー・バルセロナ開発センターのエンジニア)
右 坂本祐司氏(ソニー・ホームエンターテイメント事業本部企画戦略的部門長)<br>左 「RAVIA Internet Video」のソフトウエアを開発した平野視氏(ソニー・バルセロナ開発センターのエンジニア)
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 ソニーが自社の液晶テレビ「ブラビア」や自社のBlu-ray Discプレーヤーを対象に始めたネットサービース「BRAVIA Internet Video」(日本での名称は「<ブラビア>ネットチャンネル」)が,欧州地域で予想を超えた成長を見せている。特に人気なのが,その国の放送局の番組のIP再放送を無料で見られるキャッチ・アップ・サービスだ。「IFA2009」でサービス概要が発表された時の参加放送局は7局だったが,今回の「IFA2010」までに30局に増えている。

 しかも,ここに来てブラビアの販売にも好影響を与えるようになってきた。「BRAVIA Internet Videoで番組を見たいために,ブラビアをお買いになるお客さまがとても多くなりました。愛用者カードを見ると,購入理由の2位に来ています」と,最近まで欧州のテレビ事業の責任者だった坂本祐司氏(ソニー・ホームエンターテイメント事業本部企画戦略的部門長)は言う。

 欧州では元々,テレビ局が無料でIP再放送をしていた。英国国営放送局の放送済み番組がすべて無料で見られるアイプレーヤー・サービスが大ヒットしたことをキッカケに,民放局が一斉に同様のサービスを始めたのである。しかし,これらはパソコン(PC)向けだったためにいまひとつ視聴者が増えず,従ってスポンサーもなかなか付かなかった。それが,BRAVIA Internet Videoではテレビで見られるとあって人気が急上昇,スポンサーも付くようになったのである。

 坂本氏は,「『儲けはないし,サーバー費用は大変だし』と悩んでいた放送局のIP事業担当者に,『テレビに配信したらどうですか。テレビならたくさんの人々が見てくれますよ』と売り込みました。するととても良い反応でした。今では,多くのプロダクションが売り込みにきています。こちらの人数が足りずに対応しきれていない状況です」と,嬉しい悲鳴を上げる。

 なぜ,放送局に売り込みに行ったのか。「ユーザー調査をしてみたら,テレビとPCをつなげている,つまりPC画面をテレビで見ている人の割合が,米国では16%,日本では12%だったのに対し,欧州は44%もいたんです。驚きました。何を見ているのかを調べたら,キャッチ・アップ・コンテンツだったんです。PC向けに配信された画面を,それでは小さいので,テレビで拡大して見ていたんです。これは商機(!)だと思いました」(坂本氏)。欧州では過去に放送したすべての番組(一週間程度)を無料でテレビで見られるとは,なんと素晴らしいことか。実にユーザー・ニーズにかなったサービスと言えるだろう。日本では,著作権問題などでこのような便利なサービスはなかなか実現しない。

 ソニーは米Google Inc.が共同で「Google TV」の開発を進めている。しかし,それだけでは当初はブラビアだけの独占サービスになるが,すぐにオーブン化してしまうだろう。これに対し,RAVIA Internet Videoは,ソニーのテレビに独自の魅力を付け,ユーザーを引き付ける戦略的な武器になっている。