図1 登壇する南場氏
図1 登壇する南場氏
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図2 パソコンと携帯電話機のページ・ビューの推移
図2 パソコンと携帯電話機のページ・ビューの推移
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図3 英国を例にした試算結果
図3 英国を例にした試算結果
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図4 iPhoneが与えた影響
図4 iPhoneが与えた影響
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図5 クロスデバイス・プラットフォーム
図5 クロスデバイス・プラットフォーム
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 2010年8月31日から国内最大のゲーム開発者会議「CEDEC 2010」が開幕し(会期は同年9月2日まで)し,その開催初日の講演に携帯電話機向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の代表取締役社長 兼 CEOの南場智子氏が登壇した(図1)(Tech-On!関連記事1関連ブログ)。同社は携帯電話機向けSNS「モバゲータウン」を運営する。モバゲータウンでは,SNS利用者の交友関係を取り込んだ「ソーシャル・ゲーム」などを提供しており,急成長している(Tech-On!関連記事2)。同氏は講演の中で,日本の携帯電話機向けサービス(以下,モバイル・サービス)事業がガラパゴス化している要因,ゲーム・プラットフォームの将来,そしてDeNAとしての今後の取り組みなどについて語った。

 ガラパゴス化の要因について言及する前に,南場氏は日本国内における携帯電話機のインターネット・アクセスの状況を明らかにした。DeNAの調べによれば,国内では,2008年11月には携帯電話機によるインターネットでのページ・ビュー(PV)がパソコンを上回ったという(図2)。その後も,パソコンでのPVが月次で0.3%ずつ落ちていくのに対し,携帯電話機のほうは逆に3%ずつ伸びているという。

 このように,モバイル・サービスで日本は先進国でありながら,これまで海外進出が進んでいないのは,DeNAのようなサービスを提供する側にとって,「うまみを感じる市場でなかった」(南場氏)ことが一因にある。

 人口で見れば,日本の約1億人に対し,海外には数十億人がおり,巨大な潜在市場がある。ところが,その実態は,細分化が進み,ある一つのサービスが対象となる市場は,その一つ一つが小さいものになってしまっていた。国ごとに通信の仕様が異なり,通信キャリア間でプラットフォームが違うためだ。さらに端末メーカーごとに仕様が異なり,それぞれでプラットフォームを展開している。しかも,同じ端末メーカーでも世代間の差があり,すべての端末がモバイル・サービスの対象になるわけはない。つまり,「国別仕様×キャリア仕様×メーカー仕様×端末世代間の差」という掛け算が一つのサービスの市場となる。

 講演では,英国を例にその市場規模を試算して見せた(図3)。英国の人口を6100万人と考えると,英国で大きなシェアを誇るキャリア(約21%)と端末メーカー(約33%)を選択し,かつ端末メーカーが提供する機種のうち,全体30%ほどが対象とすると,最大で約126万人(6100万人×0.21×0.33×0.3)ほどにしかならない。実際のユーザーは,この126万人中のある割合しかいないことになる。

スマートフォンで一変


 これが2008年までの状況だった。ところが2008年から2009年にかけてこの状況が変わった。そのきっかけは「iPhone」だった(図4)。「世界82カ国で販売し,端末メーカーはApple社だけ。キャリアの違いも意識させない。端末の世代間の差もOSをアップデートすればほとんどない。つまり,これまでコンテンツ提供のボトルネックとなっていた細分化の影響がほとんどない」(南場氏)のだ。iPhoneの登場によって,「一枚のお皿の上で安心してサービスを作れる土俵ができた」(同氏)という。

 現在では,iPhoneの成功を受け,Google社のAndroid端末をはじめとする同種のプラットフォームと,各プラットフォームに対応したスマートフォンが続々と登場している。ところがこの状況によって,再び細分化がもたらされるとはみていないという。それは,3~5つの大きなプラットフォームが成功し,それぞれで大規模な市場になるとみているからだ。

 こうした流れを受け,どのプラットフォームのスマートフォンでも,ユーザー同士が同じコンテンツを楽しめる「クロスデバイス・プラットフォーム」をDeNAは提供していく考えだという(図5)。これにより,「デバイス/OSフリーの世界を目指す」(南場氏)。例えばソーシャル・ゲームであれば,異なるプラットフォーム間でユーザー同士が連携し,ゲームを楽しめるようにする。

 今後は,このクロスデバイス・プラットフォームが重要になると見ており,同プラットフォームで「世界市場に挑戦したい」(南場氏)とした。