丸型LEDモジュール「XMS」
丸型LEDモジュール「XMS」
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角型LEDモジュール「XLM」
角型LEDモジュール「XLM」
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 照明用LEDモジュールを手掛ける米Xicato社は,日本での製品展開を強化する。同社の日本法人Xicato Japanを通じ,MR16型ハロゲン・ランプの代替に向けた直径45mm(厚さ17mm)の丸型LEDモジュール「XSM」の400lm品,700lm品,1000lm品といった既存品の販売だけでなく,開発を進めている1300lm品を2010年10月に追加する。さらに2010年末から2011年初にかけて2000lmクラスの品種を発表する予定である。加えて,発光面が細長い角型LEDモジュール「XLM」の2200lm品も2010年10月に販売を始める。
 高出力LEDで定評がある米Philips Lumileds Lighting Co.から2007年に独立して設立したXicato社は,照明用LEDモジュールの技術力に自信を持っているという。Xicato Japanの代表取締役である海東 登氏に,同社製品の特徴や製品展開について聞いた。(聞き手は大久保 聡=日経エレクトロニクス)

――Xicato社製品の特徴は何か。

海東氏 LEDモジュールの発光特性の製品間バラツキが少なく,高出力でありながら均一な光を放射でき,そして点灯後に徐々に明るさが変わるといった現象や調光時の色度変化がほとんどないなど,特徴はいくつかある。照明器具メーカーが,普通のランプとしてLEDモジュールを取り扱えることを目指した特徴といえる。製品間バラつきでいえば,MacAdam Ellipseによる色度差評価で2ステップ以内にあり,人間の目では容易に差が分からない範囲に収めている。

 LEDはハロゲン・ランプなど既存の光源と大きく異なる点が多い。LEDは小さいために複数個まとめて照明器具で使わざるを得ないが,LED間での輝度や色度のバラつきが大きく,照明器具メーカーにとっては負担が大きかった。多数のLEDを購入して輝度や色度を選別し,特性の近いLEDをまとめて照明器具に組み込まざるを得ない。その手間もさることながら,照明器具間のバラツキをなくすのに苦労したり,選別に漏れたLEDの取り扱いに苦慮したりしてしまう。点光源であるLEDを集めて明るさを稼ぐので,照明器具から照射する光が当たった個所の明るさが均一とはいえない場合がある。既存のランプと同じように取り扱えるLEDモジュールを,照明器具メーカーは求めている。

――LEDモジュールにどのような工夫を施しているのか。

海東氏 リモート・フォスファーという技術を用いている効果が大きい。リモート・フォスファーとは,モジュール内においてLEDと蛍光体を離して設置する技術である。当社の製品では,モジュールの放熱基板の上に設けたキャビティ(凹)構造の中に青色LEDを複数個実装し,蛍光体を塗ったフタでそのキャビティ構造全体を覆っている。青色LEDが発する青色光はキャビティ構造内で他の青色LEDが発する青色光と混ざり,その青色光が蛍光体を塗布したフタを介して外部に放出される際に白色光となる。こうすることで,各LEDからの光が見えてしまう“粒々感”がなくなり,均一な光になるわけだ。

 LEDモジュール間の製品間バラつきも抑制できる。キャビティ構造内に実装する各青色LEDの発光特性はあらかじめ踏まえてあり,複数個を組み合わせたときの発光スペクトルが他の複数個の発光スペクトルと差が出ないように計算して,複数個の青色LEDの組み合わせを決めている。

 点灯後の明るさ低下や調光時の色度変化という問題も回避できる。照明用のLEDとしてよく用いられる白色LEDは,パッケージ内に青色LEDチップと蛍光体を設けている。この構成では点灯時に青色LEDチップの温度が上昇すると,すぐ近くにある蛍光体の温度もつられて上がることで蛍光体の発光特性が悪化し,それによる明るさ低下や色度変化が生じてしまう。複数の蛍光体を混ぜて使う場合は現象がさらに深刻だ。例えば,黄色蛍光体と赤色蛍光体では温度による発光特性の変化が異なるからである。ちなみに,調光によって発光特性が変化する理由は,LEDチップへの投入電流量が違うことでチップ温度に差が生じ,それにより蛍光体の温度に違いが出るからである。

 我々はリモート・フォスファーにより,熱源となる青色LEDチップを蛍光体と離すことで蛍光体の温度上昇を抑えて,明るさ低下や色度変化が起きないようにしている。点灯時のLEDモジュール底面の温度を70℃とすると,通常はLEDチップの接合温度(発光部の温度)が120℃程度にもなる。一般的な白色LEDを使う場合,蛍光体の温度は110℃前後になってしまうだろう。それに対して我々の製品では,蛍光体の温度50~60℃にとどまる。この蛍光体の温度差が与える影響は大きい。