パナソニックの道正志郎氏(戦略半導体開発センター ハードウエア設計エキスパート)は,米Magma Design Automation, Inc.のアナログ回路最適化ツール「Titan-ADX」をA-D変換器の設計に適用してきた軌跡について発表した。この発表は,7月16日に新横浜で開催のMagmaのプライベート・イベント「Magma TechTalk Japan 2010」で行われた。

図1●アナログ回路最適化ツールの歴史 パナソニックのデータ。
図1●アナログ回路最適化ツールの歴史
パナソニックのデータ。
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 同氏が見せた最初のスライドは,「アナログ回路最適化の歴史」というタイトルだった(図1)2000年に米Barcelona Design, Inc.の製品の導入を検討したときから10年が経ち(Tech-On!関連記事1),その間,紆余曲折があり,最近になってようやくアナログ回路最適化技術が製品設計で成果を上げるようになったと述べた。Barcelonaは米Stanford Universityが開発した凸関数の最適化技術をアナログ回路のパラメータ最適化に適用し,商用化した(Tech-On!関連記事2)。ただし最適化ツールを直接売るのではなく,それを特定の回路に適用し,ユーザーが欲しい回路を売るというIPコア・プロバイダ型のビジネス・モデルを採用した。

3度目の正直で安心して使えるように

 アナログ設計技術に明るくなくても最適化されたアナログ回路を得られるという触れ込みで,Barcelonaは大いに注目を集めた。「同社を訪ねると,新品の自動車がガレージに並んでいて,いやな予感がした」(道正氏)。技術陣と経営陣の考え方の違いなどによって,Barcelonaは事業を中止した。その少し前に,アナログ設計者最適化ツールを売る方向にビジネス・モデルを変更したが(Tech-On!関連記事3),時すでに遅かったようだ。