今回のスーパーコンピュータ・システム「GRAPE-DR」。64ノード構成で,1ノードはIntel社の「Core i7-920」,アクセラレータ・ボード,台湾ASUS製マザーボード,18GB分のDDR3メモリ,x4 DDR InfiniBandなどから成る。
今回のスーパーコンピュータ・システム「GRAPE-DR」。64ノード構成で,1ノードはIntel社の「Core i7-920」,アクセラレータ・ボード,台湾ASUS製マザーボード,18GB分のDDR3メモリ,x4 DDR InfiniBandなどから成る。
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東大と国立天文台が開発したアクセラレータ・ボード。アクセラレータLSIのGRAPE-DRを4枚搭載している。
東大と国立天文台が開発したアクセラレータ・ボード。アクセラレータLSIのGRAPE-DRを4枚搭載している。
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 東京大学と国立天文台は7月6日,共同開発したスーパーコンピュータ・システム「GRAPE-DR」が,単位消費電力当たりの演算性能を競う「Green500プロジェクト」のランキング「Little Green500 List」の6月版で第1位にリストされたと発表した。

 GRAPE-DRの単位消費電力当たりの演算性能は815.43MFLOPS/W。同ランキングで2位だったドイツにある米IBM Corp.製システムの773.38MFLOPS/Wを約5%上回った。

 GRAPE-DRは,東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授の平木敬氏と国立天文台 理論研究部 教授の牧野淳一郎氏の研究グループが共同で開発したシステム。米Intel Corp.製のマイクロプロセサ「Core i7-920」と,今回のシステムと同名のアクセラレータLSIを組み合わせて構成したものである(関連記事)。

 現在のアクセラレータLSIのGRAPE-DRは,倍精度200GFLOPSの演算を50Wで実現する。今回のシステムでは,同チップを4個搭載したボードとマイクロプロセサ1個の組を64組利用している。このアクセラレータを利用しない場合,単位消費電力当たりの演算性能は150MFLOPS/W程度。アクセラレータによって同性能が約5倍に向上するという。

 今回の演算性能の評価には,スーパーコンピュータのランキング「TOP500」と同じHPL(high performance Linpack)ベンチマークを用いている。アクセラレータLSIのGRAPE-DRは,牧野氏の研究グループが当初天文学で利用する重力多体計算専門に開発していた「GRAPE」シリーズを基に,科学技術計算での汎用性を大幅に高めたLSIである。

 ちなみに,Green500プロジェクトのランキングには「Green500」と今回の「Little Green500」2種類があり,Green500のリストには今回のシステムは載っていない。両ランキングの違いは,Little Green500がより小規模のシステムも対象に含めている点である。Green500がTOP500の最新版にリストされているシステムを評価対象にしているのに対して,Little Green500では,システムの演算性能が1年半前のTOP500に載る水準であれば対象になる。今回のシステムの演算性能は23.4TFLOPSで,TOP500の最新版の500位ラインである24.67TFLOPSにわずかに届かなかった。

 東京大学と国立天文台は「(メモリを増強したりインターコネクトを高速にすることなどで)今年度中に単位消費電力当たりの演算性能を50%程度は引き上げられる」とする。