写真1 将来のビジョンを語るソフトバンク社長兼CEOの孫正義氏
写真1 将来のビジョンを語るソフトバンク社長兼CEOの孫正義氏
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 「人智を超えたコンピュータと暮らす世界がやってくる」。ソフトバンク社長兼CEOは2010年6月25日,東京都内で開催された「ソフトバンク 新30年ビジョン」の説明会で,300年会社を存続させるにはどうすればいいかを考えるために300年後の世界を展望し,このように語った(写真1)。

 同氏によれば,ムーアの法則に従えば2018年にマイクロ・プロセサのトランジスタ数は人間のシナプスの数である300億個を超え,人間の脳よりも高度になるとした。さらに,100年後にはさらに人間のシナプスの数の10の20乗倍を超え,200年後には10の40乗倍,300年後には10の60乗倍になるとした。この結果,「人間の脳をはるかに超えるものが地球上に誕生することになる」(孫氏)という。

 さらに,今後は人間の脳と似た仕組みを持つ脳型コンピュータが生まれてくると言う。現在のコンピュータはデータとアルゴリズムを外部から与えられて動くが,人が経験から学習し,解決策を体得していくように,自らデータを収集し,アルゴリズムを自動的に生成するコンピュータの時代がやってくるというわけだ。

 「既にこの兆しが見えてきている」(孫氏)。まず,学習では,検索サービスにおいてWebページのデータを自動的に収集する技術が確立されている。また,自動学習の研究も進んでいるという。

 続けて,こうした知的なコンピュータを生み出すことに対する排斥運動が,起こると予測した。ちょうど今から300年前には蒸気機関の発明など産業革命が起きたが,人間の仕事を奪うとして,当時,機械に対する排斥運動が起こった。これと同様の事象が起こるというわけだ。しかし孫氏は「今では,機械を積極的に使うようになっている。動力機械は人の重労働を解放し,仕事を効率化し,人はより人らしく生きられるようになった」とし,「むしろ,今,人が機械の力を借りながらいろいろな作業をしているように,300年後には知的な作業を脳型コンピュータと協力しながら,さまざまな問題を解決するようになる」とした。ただし,コンピュータが暴走しないように“愛情”,すなわち人に対する思いやりをコンピュータに与える必要があるという。

 また,人と人,人とコンピュータの通信も,ブレイン-マシン・インタフェースによって実現し,人の脳を拡張できるようになるとした。「その時代には,ソフトバンクは通信の会社ではなく,“テレパシー”を提供する会社になっているかも知れない」(孫氏)という。

 このように,300年の長期で見れば,現在は情報革命の入り口にいるに過ぎず,今後,どんどん新しい技術やビジネス・モデルが生まれてくる。そのため,一つの製品や技術,ビジネス・モデルに固執していては会社を永続的に発展させていくのは難しい。そこで,ソフトバンクでは「“情報革命で人々を幸せに”という社是の下,世界の最も優れた企業とアライアンスを結びライフスタイルと革新していくことで300年生き続ける会社を目指していく」とした。