3.5型のオンセル方式の表面型静電容量式タッチ・パネル(NEC液晶テクノロジー)
3.5型のオンセル方式の表面型静電容量式タッチ・パネル(NEC液晶テクノロジー)
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10.1型のオンセル方式の抵抗膜式タッチ・パネル(Samsung Electronics社)
10.1型のオンセル方式の抵抗膜式タッチ・パネル(Samsung Electronics社)
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13.3型のオンセル方式の投影型静電容量式タッチ・パネル(Samsung Electronics社)
13.3型のオンセル方式の投影型静電容量式タッチ・パネル(Samsung Electronics社)
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13.3型のオンセル方式の投影型静電容量式タッチ・パネル(LG Display社)
13.3型のオンセル方式の投影型静電容量式タッチ・パネル(LG Display社)
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 タッチ・パネルの仕様や関連部材,サプライ・チェーンなどを一変させる可能性を秘めた技術が登場する。液晶とタッチ・パネルとの一体化技術である。2010年後半には量産が始まり,大手携帯電話機メーカーなどが採用する見通しだ。タッチ・パネルを液晶と一体化することにより,厚みを抑えたり,軽くしたりできる。現在のタッチ・パネルは厚さ約 1mmである。これは,iPadの厚みの約7%に相当する。外付けだったタッチ・パネル部品を一体化できれば,薄型化,軽量化が可能になる。

 また,タッチ・パネルを液晶に外付けする従来方式では,液晶とタッチ・パネルの間の物理的な空間が存在していた。従って,液晶パネルの上面やタッチ・パネルの下面で外光などが反射してしまい,屋外などの明るい環境下での視認性が低下していた。外付けだったタッチ・パネル部品を一体化できれば,この屋外でのような視認性の低下を抑制できる。

 液晶の画素の中にタッチ・センサ機能を組み込むインセル技術の提案は以前からあったが,歩留まりや表示性能の確保が難しく,実用化が進まずにいた。この原因は,TFTアレイ基板上の画素内部にタッチ・センサ機能を組み込もうとしていたことである。このために,複雑な半導体製造プロセスを使うハメになり,歩留まりの足かせになっていた。また,画素内にタッチ・センサを組み込むことで,表示に利用できる面積が減ってしまい,画質劣化の要因にもなっていた。

 これに対し,TFTアレイ基板上の画素内部ではなく,カラー・フィルタ基板上にタッチ・センサ機能を設けて一体化する「オンセル」技術の登場によって転機が訪れた。カラー・フィルタ基板と偏光板の間に,簡単な透明電極パターンなどを形成するだけで済むため,歩留まりを確保しやすい。また,画素内の有効表示領域の面積も減らないため,画質劣化もほとんどない。

 オンセル方式のような液晶との一体化技術が普及すれば,外付けのタッチ・パネル部品は不要になっていく。タッチ・パネルを製造する担い手は,従来の外付けタッチ・パネルのメーカーから,液晶パネルやカラー・フィルタのメーカーにシフトしていく可能性が高い。機器メーカーがタッチ・パネル・メーカーから外付け部品を調達していたような,従来のサプライ・チェーンは一変することになるだろう。

 2010年6月30日に開催する日経エレクトロニクス・セミナー「新世代タッチ・パネル」では,こうしたインセル/オンセル方式のタッチ・パネル技術について,九州大学 教授の服部励治氏(産学連携センター プロジェクト部門 フォトニクシステム領域 教授)が解説する。研究開発が盛んなインセル/オンセル方式の論文・講演発表に見られる技術内容と動向を分析する。