紀伊國屋書店は,一般消費者向けの電子書籍販売事業を始める。まず2010年9月に,米Apple Inc.の「iPhone」や「iPad」に向けた「紀伊國屋書店アプリ」の提供を開始する。以降,Androidを搭載するスマートフォンなど,多様な端末を通じた販売も計画する。

 紀伊國屋書店 代表取締役社長の高井昌史氏は,2010年6月22日に開催された「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会(第三回)」において,「日本の出版文化を支える地域書店とも協調した『日本の書店発の電子書籍流通モデル』の確立を目指す」とした。

 「書店発」とする特徴の一つが,「ハイブリッドデジタル販売モデル」である。これは,書店の店舗において,紙の本と同時に,SDメモリーカードに格納した電子書籍の販売も行うというもの。これにより,書店という「場」を生かしながら,電子書籍の販売も実施するというスタイルの確立を目指す。

 インターネットでも,紙の本と電子書籍の両方の販売を実施する。これにより,二つの商品(紙の本と電子書籍)を,それぞれ二つの売り場(店舗とインターネット)で販売し,合わせて四つの「出口」を作ることで,販売機会の増大を狙う。

 2010年9月の時点で用意される電子書籍のタイトル数については,「これから出版社などと交渉していく上で決まる」(紀伊國屋書店の高井氏)とした。

 今回の事業については,講談社,小学館,集英社,角川グループといった出版社の賛同を得ているという。また,技術面では,凸版印刷やインフォシティ,ボイジャーの協力を受けて取り組むとしている。