図1 2012年には需要は急減するとの予測。日立コンシューマエレクトロニクス 取締役社長の渡邊修徳氏が説明した
図1 2012年には需要は急減するとの予測。日立コンシューマエレクトロニクス 取締役社長の渡邊修徳氏が説明した
[画像のクリックで拡大表示]
図2 “脱”テレビ中心を進める
図2 “脱”テレビ中心を進める
[画像のクリックで拡大表示]

 日立コンシューマエレクトロニクスが,3次元(3D)映像を表示可能な「3Dテレビ」を2010年度中に投入することが分かった。日立製作所が2010年6月9日に開催した,アナリスト・機関投資家・報道関係者向け事業説明会「Hitachi IR Day」で,日立コンシューマエレクトロニクス 取締役社長の渡邊修徳氏が明かした。なお,日立コンシューマエレクトロニクスは,日立製作所から2009年7月に分社化された,薄型テレビなどのAV機器を手掛ける子会社である( Tech-On! 関連記事1)。

 3Dテレビは,パナソニックやソニー,シャープ,東芝,三菱電機,海外では韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,韓国LG Electronics Inc.とほとんどの大手テレビ・メーカーが発売済み,あるいはまもなく発売する。その中で,日立コンシューマエレクトロニクスは「(2010年6月から発売する機種に搭載する)超解像技術と3Dを組み合わせる」(渡邊氏)ことで差異化を図るとする( Tech-On! 関連記事2)。このほか,「秋口には,独自方式のLEDバックライトを搭載した液晶テレビを国内に投入する」(同氏)計画だ。

構造改革で黒字転換


 同社のテレビ事業全体としては「(通期では赤字だが)2009年度の後半から黒字に転換した」(同氏)。これまで進めてきた構造改革が功を奏した格好である。自社生産から調達に切り替えたことが大きく寄与した。具体的には,欧米向けテレビの生産拠点であるチェコやメキシコの工場は閉鎖し,中国工場は液晶プロジェクタの世界生産拠点に転換させた。PDPも自社生産をやめており,生産拠点だった日立プラズマディスプレイの宮崎工場はソーラーフロンティア(旧 昭和シェルソーラー)に売却した( Tech-On! 関連記事3)。

 ただ,国内の薄型テレビ市場の見通しは明るくないとみる。「国内需要は,2010年度の1600万台から,2012年には700万台まで激減する」(同氏)という(図1)。2009年度と2010年度は,エコポイントや地上デジタル放送への移行による効果で需要は旺盛だが,2012年度はこの反動で激減すると予測する。そこで,調達品を活用して製品ラインナップの拡大を図りつつ,固定費の削減を進める。「何とか黒字を守っていきたい」(同氏)とする。

テレビ中心からの脱却


 日立コンシューマエレクトロニクスは,薄型テレビ事業中心から,「映像・コンポーネント事業」への構造転換を推進する事業方針を掲げている(図2)。映像・コンポーネント事業とは,液晶プロジェクタや光ストレージなどの事業を指す。映像プロジェクタは事業を拡大し,2011年度には世界シェア首位を狙うとする。国内や欧米では機種を拡充するほか,教育用途で需要が見込まれる中国や,その他の新興国の市場開拓を積極的に進める。DVDやBlu-rayといった光ストレージ分野では,これまで9年間シェア首位を維持しているという。2010年度のシェアは,台数ベースで35%超を目指す。

■変更履歴
記事掲載当初,最後から2番目の段落で「2010年には700万台まで激減する」としていましたが,正しくは「2012年には700万台まで激減する」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。