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「MIMOがスマートグリッドや無線電力伝送の基礎になる」,東工大の研究者に聞く

2010/06/07 22:44
野澤 哲生=日経エレクトロニクス
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東工大 准教授の阪口啓氏
東工大 准教授の阪口啓氏
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 東京工業大学 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 准教授の阪口啓氏は,LTEの基地局などの試作機をいち早く開発するなど,移動体通信分野の最先端の研究者/技術者である。早ければ2010年7月にも日本で始まるLTEの試験運用を前に,その重要な技術の一つであるMIMO(multiple input multiple output)の現状と今後のさらなる応用可能性について話を聞いた。(聞き手は野澤哲生=日経エレクトロニクス)

――MIMOは,無線LAN,WiMAX,そしてLTEに搭載された。無線LANではアンテナを4〜6本実装したものもあるが,携帯電話機のような端末に載せられるアンテナはせいぜい2本。小さな端末でアンテナを増やす技術としてメタマテリアルがあったが,最近は新しい話をあまり聞かなくなった。MIMO自体に今後の発展の余地は小さいように見える。

阪口 最近はメタマテリアルよりも,アンテナ1本で複数の方向に利得を持つような技術が注目されている。ただし,MIMOは単にアンテナの本数云々といった議論をはるかに超えた,大きなポテンシャルを秘めた技術だ。

 発展の方向性は大きく二つある。一つは,通信分野でのさらなる発展。これまでMIMOは通信端末と基地局などの通信相手との1対1の通信で,帯域を広げたり,通信の信頼性を高める技術だった。これを超える技術として,多対多の通信が考えられている。いわゆる「MIMOメッシュ・ネットワーク」だ。

 メッシュ・ネットワークは例えば,IEEE802.15.4のTG4gで議論中のZigBeeの次世代仕様「SUN:smart utility network」がそうだ。これは,次世代電力網(スマートグリッド)での応用をめざしたもので,多数のスマートメーターと多数の基地局を前提にデータをやりとりすることを想定する。遠くない将来に電力会社などが採用する可能性がある。

 LTEの次世代仕様である「LTE Advanced」でも,端末と基地局は多対多となる仕様が議論されている。こうした通信ネットワークではMIMOを利用することで信頼性が向上する。ただし,本格的な研究はまだ始まったばかりで,グラフ理論,ゲーム理論,べイジアン・ネットワークといった,従来の通信技術を超えた枠組みでの議論が求められる。

――もう一つの方向性とは。

 電波を使いながら高効率にエネルギー伝送を実現することを目指す無線電力伝送の技術開発だ。当初は部屋や建物の中での話になるが,RFIDタグなど無線端末を多数利用したメッシュ・ネットワークで,通信と無線による電力伝送の両方の機能を実現することを考えている。我々はこれを「ワイヤレス・グリッド」と呼んでいる。

――電波で電力を送ると効率が低いはずだが?

 ワイヤレス・グリッドなら理論上は,最大70〜80%の伝送効率を実現できる。具体的には,各端末からの電力伝送キャリアの位相を制御して,送信ダイバーシチを実現し,無線電力の指向性を制御する。電波の出力が1Wぐらいなら人体にも安全だろう。

 これに加えて,建物内では壁に「電力レクテナ」と呼ぶアンテナの一種を多数配置して,「受信」できなかった電波の電力を回収して再利用する。

 将来的には,屋外でも電柱に近づくと自動的に携帯電話機が充電されるようなシステムの実現も可能だと考えている。
 

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