図1 注力分野
図1 注力分野
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図2 スマートグリッド関連事業について
図2 スマートグリッド関連事業について
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図3 パワー半導体事業について
図3 パワー半導体事業について
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 三菱電機は,2010年5月24日,報道機関向けに説明会を開催し,今後の経営方針を明らかにした。景気回復期に入ったことを考慮して従来よりも,「成長性をより重視する」(同社 執行役社長の山西健一郎氏)という。その実現のため,グローバル化を推進しつつ,環境関連事業と社会インフラ事業に注力していく。特にスマートグリッド関連事業とパワー半導体事業,そして太陽光発電システム事業の三つに力を入れる(図1)。

 スマートグリッド関連事業については,2020年以降の送配電網を想定した実証実験設備を自社内に構築する(図2)。投資額はおよそ70億円である(Tech-On!関連記事1)。パワー半導体事業に関しては,1.電気自動車やハイブリッド車といった電動車両向けインバーターや,2.エアコンや冷蔵庫,洗濯機向けインバーター用IPM,3.鉄道向けIGBT,4.産業機器向けIPMやIGBT,5.太陽光発電用IPMなどの市場が今後拡大するとみており,これらの分野に注力する(図3)。中でも2のうちの中国のインバーター搭載エアコンの市場拡大や,アジア市場全体で洗濯機などのインバーター搭載家電の需要がのびるとみており,これらに積極的に対応するという。

 さらにパワー半導体関連事業では,既存のSi製半導体素子だけでなく,次世代材料のSiCを利用したパワー半導体素子の開発も積極的に進める考えも示した。インバーターなどでの電力変換において,大幅な効率改善を見込めるためである。開発費と設備投資として2011年度までに約135億円を投じる考えだ(Tech-On!関連記事2)。既に4インチ・サイズのSiC基板換算で,月産3000枚の量産試作ラインを構築済みである。SiC製パワー半導体素子を採用した製品を2010年度中にサンプル出荷,2011年度中の量産出荷を目標とする。

 太陽光発電システムでは,現在量産している多結晶Si系に加え,将来的には薄膜Si系太陽電池の量産も視野に入れる。「14~15%といったある一定の効率を実現したら量産する」(山西氏)とした。

  このほか環境関連/社会インフラ事業として,エアコンやヒート・ポンプ技術などの「空調システム事業」,産業機器関連の「FAシステム事業」,自動車で利用する回転機(オルタネータ・スタータ),EPS(電動パワーステアリング用モータ・コントローラー)などの「自動車機器事業」,鉄道関連の「交通システム事業」,原子力発電や火力発電などの「電力システム事業」,人工衛星といった「宇宙システム事業」を強化する考えである。例えば,交通システム事業では,2015年度までに海外売上高を倍増し,宇宙システム事業では,今後10年間で1500億円規模にまで拡大したいとする。

テレビ事業をやめない


 説明会では,今後のテレビ事業についても言及した。「規模は追わないが,家電事業の顔であるテレビ事業をやめることはない。だからといって赤字は許されない。やるからには黒字にする」(山西氏)と意気込む。三菱電機のテレビ事業の改善は進んでおり,2009年度に黒字化を果たしたという。今後も黒字を維持するため,「特徴ある製品を出したい」(同氏)。同社は2010年夏に発売する予定の3Dテレビでも,他社にはない特徴を打ち出すという。具体的には,2010年5月末にも発表する予定である。