図1 EVFは撮影体験を変える。日経エレクトロニクス,2010年2月22日号「さらば,一眼レフ,『ミラーレス機』の時代へ」より。
図1 EVFは撮影体験を変える。日経エレクトロニクス,2010年2月22日号「さらば,一眼レフ,『ミラーレス機』の時代へ」より。
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図2 3Dスイング・パソラマ。ソニーのプレス・リリースより。
図2 3Dスイング・パソラマ。ソニーのプレス・リリースより。
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 ソニーは2010年5月11日,ミラー・ボックスや光学ファインダーを備えないレンズ交換式カメラ(ミラーレス機)「NEX-3」「NEX-5」を発表した。その内容については,デジカメWatchやDigital Camera.jpの5月11日分の記載が詳しい。ここでは,商品企画担当者との質疑応答などを通して分かった,本質的な他社製品との違いについて報告する。

 率直に言って今回の発表は,驚きに乏しい。SonyAlphaRumors.comなどで仕様がダダ漏れだったことも,その背景にはあるが,何よりも今回発表になった機種が持つインパクトが,

・パナソニックにキャッチアップしたこと
・パナソニック製品よりも安価なこと

の二つだったからだ。ユーザー体験を刷新することで市場を拡大するという要素は,発表会での取材では見つけられなかった。なお,フランジバック(マウント面から撮像素子までの長さ)は従来の半分以下に当たる18mmである。手ブレ補正機構はカメラ本体に内蔵していない。

 マイナス面での「驚き」もあった。早晩改善されることだろうが,上の結論に至った一因なので記すと,

・交換レンズのロードマップを全く言わなかったこと。消費者が安心してカメラ本体を買えない。
・EVF(電子ファインダー)を用意しなかったこと。EVFの大切さについては,右上の図1のほか,ユーザーが写真のボケ具合を一眼レフの光学式ファインダーより的確に制御できたり,ファインダーを目的に応じて取り換えられたりすることがある。比較的,儲けやすいアクセサリーでもある。
・マウント・アダプタを介すると,既存のαレンズ(Aマウント・レンズ)のAFが動作しないこと。開発中とのことだが,今回の発表で1本のレンズも動作保証しなかったことに,既存顧客の取り込みに消極的な姿勢が見えた。詳細は未確認だが,レンズ中の絞りの動作に関してもカメラ本体との連動が乏しいようだ。「測光中は開放固定」という。
・背面ディスプレイに現れる文字を消せなかったり,感度設定を即座に変えられなかったりするなど,ユーザー・インタフェースが未熟なこと。

 この一方で,かなり優れていたのは,

・動画撮影中にオートフォーカス(AF)が確実に動作し続けること

である。標準ズーム・レンズとの組み合わせでは,ズーム倍率を変えた後,ユーザーが合焦を指示しなくても,緩やかながらピントをしっかり合わせ続けていた。これはキヤノンやニコンの製品にない特長である。静止画撮影時のAF速度は,パナソニック製品よりわずかに遅い水準に感じられた(オリンパス製品と同等か)。つまり,十分に”使える”ものだった。AFの方式はコントラスト比検出である。

 加えて,7月中旬にファームウエア・アップデートにて実装予定の「3Dスイングパノラマ」は,着眼点が秀逸というほかない。これは左から右にカメラをスイングする際に,地点”X”では左目用の画像を,そこから6cmほど進んだ地点”X+6”では右目用の画像を取得するものである(図2)。「今のところ3Dパノラマ写真の合成の失敗率が,2Dの合成に比べて特に高くなったという報告は聞いていない」(説明員)という。

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