五つの注目領域を抽出 Tech-On!が撮影。スライドは2010 Symposium on VLSI Circuitsプログラム委員会のデータ。
五つの注目領域を抽出 Tech-On!が撮影。スライドは2010 Symposium on VLSI Circuitsプログラム委員会のデータ。
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 「2010 Symposium on VLSI Circuits」が6月16日-18日に米ハワイ州ホノルルで開催される。企業の参加意欲が回復したことで,論文の採択率は22%(採択数は92件)と難関だったが,それだけに「いずれも厳選された論文」(VLSI回路シンポジウムプログラム委員会)だという。

 プログラム委員会は5月10日に東京で報道機関向けに説明会を開催,その「厳選された論文」の中からお勧めの13件について概要を説明した。同委員会は,今回のVLSI回路シンポで注目される技術領域を五つ挙げて,それぞれ複数のお勧め論文を挙げた。なお技術領域はセッションの区分けとは直接関係がないため,お勧め論文は複数のセッションに分かれている。

 注目の技術領域は,(1)LSIのグリーン化,(2)健康を見守るLSI,(3)無線の適用領域の拡大,(4)微細化に伴う問題に回路技術で戦う,(5)さらなる高集積化・高機能化に向けて,である。それぞれの領域をデジタル,アナログ/ワイヤレス,メモリのサブ領域に分けている。

0.25Vで動作するGPSレシーバ

 (1)の「LSIのグリーン化」では,五つのお勧め論文があった。まず,「低電力プロセサ(デジタル)」では,富士通と富士通研究所が共同開発したMPU「SPARC64 VIIIfx」を推した(論文番号C16-1)。SPARC-V9/JPS/HPC-ACEプロセサ・コアを8個,5Mバイトの共有L2キャッシュなどを集積し,ピーク性能は128GFLOPS。45nmのCMOSプロセスで製造し,消費電力は58W(高負荷ソフトウェア稼働。30℃の平均値)である。

 グリーン化の残りの四つの論文は,二つが「低電力無線レシーバ(ワイヤレス)」,もう二つが「低電力A-D変換器(アナログ)」である。低電力トランシーバでは,米Azuray Technologies社と米Oregon State Universityが共同開発した「0.25V動作で消費電力が325μWのGPSレシーバ」(論文番号C13-4)と,米Columbia Universityが開発した「0.6V動作で消費電力が26.4mWの900MHz帯レシーバ」(論文番号C17-4)を紹介した。前者は0.13μmのCMOS,後者は65nmのCMOSで作った。

 二つの低電力A-D変換器はどちらも,65nmのCMOSで製造したインタリーブ型のフラッシュ方式で,共にバック・グラウンドでデジタル補正している。米Stanford Universityは12Gサンプル/秒で5ビットのA-D変換器を81mWの消費電力で実現した(論文番号C15-4)。台湾National Chiao Tung Universityは16Gサンプル/秒で6ビットのA-D変換器を作った(論文番号C15-5)。

訂正> この記事の掲載当初,論文番号C16-1のMPUを開発したのは,「富士通」と記述しておりましたが,「富士通と富士通研究所の共同開発」でした。お詫びして訂正します。現在,当該個所は訂正した状態になっております。