iBooksを使い,電子書籍を表示した様子
iBooksを使い,電子書籍を表示した様子
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「TIME」のアプリ。ページ下部に,各コラムのトップ・ページのサムネイルを一覧できるフレームが表示される。
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スポーツ新聞「日刊スポーツ」のアプリ。記事に関連する写真を画面いっぱいに複数表示するモードを備えている。
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米Apple Inc.のタブレット端末「iPad」における主要な用途の一つが,電子書籍の閲覧である。実際同社は,iPadの発売とともに電子書籍用アプリ「iBooks」の提供を開始した。「識者はこう見る」シリーズの第二回は,電子書籍コンテンツのコンサルタントなどを手掛ける,イースト コミュニケーション事業部 シニアマネージャーの藤原隆弘氏に,電子書籍端末としてみたiPadの特徴や,電子書籍市場に与える影響などを聞いた。(聞き手は根津禎=日経エレクトロニクス)

関連記事を日経エレクトロニクス2010年5月17日号に掲載予定です

 iBooksはよくできたアプリだ。iBooksでは,電子書籍が本物の書籍のように表現される。例えば,ページを切り替えると,本物の紙がめくれるような映像が表示される。それゆえ,「本をめくる」という感覚をユーザーが抱きやすい。こうしたリアルさは,既存の書籍を読んでいる人々を取り込むには良い。既存の電子書籍端末のように電子ペーパーを利用した場合,ページを切り替えると表示全体が書き換わる。ユーザーは,これに違和感を覚える場合がある。一方,iBooksは実際の書籍のように表示が切り替わるので違和感がない。

 現状では,iBooks以外にもさまざまな電子書籍アプリが登場しており,iPadはまさに「実験場」と化している。iPad向けアプリとして電子書籍コンテンツを作る場合,表示や操作法,UIについて凝ろうと思えばいろんなことができる。もちろん,必ずしも凝ったUIが,書籍をただ読みたいユーザーにとってふさわしいかどうかはわからない。それゆえ,将来的には定型的なUIのものと,新しい凝ったUIのものに二極化する可能性がある。

 電子書籍コンテンツを配信する側にとっては,iPadの登場によって,ユーザー数の増加を見込める。つまり,電子書籍市場が拡大する可能性がある。一方,書籍専用端末とは異なり,iPadでは「無料」のWebページを閲覧できる。このため,有料の電子書籍コンテンツにユーザーがどの程度時間を割いてくれるかが不透明だ。

 また,iPadを電子書籍端末としてみた場合にいくつか気なる点もある。例えば,両手なら持てるが,本体背面の端に曲面があるため,片手では持ちにくい。iPadのディスプレイは光沢があるので,今のままだと長時間読書すると目が疲れるかもしれない。また,電子ペーパーを利用した専用端末に比べれば,連続動作時間が短い。

 2010年はiPadのような9.7型のタブレット端末市場が,米国で開花するとみている。こうした端末は,「書類(資料)端末」としてビジネス・シーンで使われるだろう。また,iPadの場合,応答速度が速いカラー液晶パネルを搭載しているので,ビジネス・パーソンが数人で会議したり,プレゼンしたりする際に利用する,「打ち合わせ端末」としても利用できるだろう。